【脳挫傷のすべて】GCSによる重症度別治療戦略と予後:後遺障害とリハビリの日数上限を解説

頭部への強い衝撃により脳組織そのものが損傷する脳挫傷外傷性脳内血腫は、緊急性が高く、生命と将来の生活に大きく関わる重篤な外傷です。治療は、患者様の意識レベルを示すグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)に基づいて重症度別に進められ、血腫の大きさによっては緊急手術が必須となります。本記事では、この脳組織の直接的損傷に焦点を当て、GCSに基づく治療の原則、外科的治療の主な適応を詳述します。さらに、日本の診療報酬制度におけるリハビリテーションの日数上限という現実的な論点と、高次脳機能障害をはじめとする主な後遺障害についても解説し、長期的な予後を見据えた治療の全体像を提示します。

脳組織の直接的な損傷(脳挫傷・外傷性脳内血腫)

1. 治療の原則

治療は損傷の重症度(主に意識レベルと画像所見)によって大きく異なります。重症度の評価には、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)が広く用いられます。

重症度(GCS)主な管理・治療法
軽度(GCS 13~15点)経過観察(原則:保存的治療):安静臥床、頭痛・吐き気に対する投薬、定期的な神経学的評価(意識レベルの変化を厳重にチェック)。
中等度(GCS 9~12点)入院による厳重な経過観察:頭蓋内圧亢進予防のための管理(安静、輸液制限など)、必要に応じて予防的な外科的処置や頭蓋内圧モニターの検討。
重度(GCS 3~8点)集中治療(ICU管理)と外科的治療:気管挿管、人工呼吸管理、頭蓋内圧亢進に対する薬物治療(浸透圧利尿薬など)。緊急手術の適応があれば速やかに実施。

外科的治療(手術)の主な適応

以下の条件を満たす外傷性脳内血腫脳挫傷は、脳を圧迫し生命に関わるため、血腫除去術や外減圧術などの手術が検討されます。

  • 血腫の直径が1~2cm以上または容量が20〜30ml以上ある場合
  • 血腫による正中偏位(脳の中心線がズレること)がある場合
  • 神経症状が進行性・悪化している場合
  • 重度の意識障害(GCS 3~8点)がある場合

2. 診療報酬と入院日数

日本の診療報酬制度において、脳挫傷の治療は「外傷性脳損傷(TBI)」として扱われます。特にリハビリテーションに関する診療報酬の算定では、上限日数が重要な論点となります。

  • 急性期入院:重症度によりますが、16日程度が一つの目安とされるデータもあります。
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料
    • 脳血管疾患等として分類される場合(脳梗塞など)は、算定上限日数が150日です。
    • 多発性外傷など、より複雑な損傷を伴う場合は180日となる可能性があります。
    • 脳挫傷は「頭部外傷」に分類されますが、高次脳機能障害を伴う場合、脳血管疾患等に準じた扱いでリハビリ日数を確保できるかどうかが論点となることがあります。

3. 予後(見通しと後遺障害)

予後は受傷時の重症度(GCS)と合併損傷の有無に大きく左右されます。

予後の目安

  • 初期のGCSスコアが高いほど、良好な回復が見込まれます。
  • 軽度の脳挫傷であれば、一般的に数週間から数か月で回復します。
  • 中等度〜重度の脳挫傷は、長期間の治療とリハビリテーションが必要になり、後遺症を残す可能性が高くなります。

主な後遺障害

脳挫傷による損傷部位や程度により、以下のような高次脳機能障害やその他の神経症状が残ることがあります。

障害の種類具体的な症状の例
高次脳機能障害記憶障害、注意障害、遂行機能障害(計画・実行能力の低下)、感情の制御困難、社会的行動の障害(性格変化)
運動障害片麻痺(体の片側の麻痺)、歩行障害、協調運動障害
感覚障害視野狭窄(視界が狭くなる)、感覚鈍麻
その他外傷性てんかん、頭痛、めまい

後遺障害等級(交通事故など)

交通事故などで脳挫傷を負った場合、症状固定(治療を続けても改善が見込めない時期)の後に、後遺障害等級が認定されます。

  • 特に高次脳機能障害の程度に応じて、非常に重い等級(1級~7級など)が認定されることもあります。
  • 例えば、後遺障害12級が認定された場合、労働能力喪失率は原則として14%とされます。

後遺症の治療は、主にリハビリテーション(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)が中心となり、生活の質の回復を目指します。


脳挫傷や外傷性脳内血腫の診断と治療は、生命に関わる緊急性の高いものであると同時に、長期的なリハビリと社会復帰を見据えた計画が必要となります。