脳梗塞の治療は**「時間=脳」**という原則に基づいた、極めて迅速な判断と行動が求められます。発症からの経過時間によって、命を救い後遺症を最小限に抑える治療法が劇的に変わるからです。特に、現代の標準治療では、発症直後の数時間に強力な治療を集中させます。
脳梗塞の治療
| 発症からの時間 | 治療の選択肢(2025年日本) | 適応条件・成功率の目安 |
|---|
| 0〜4.5時間 | ① rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 ② 血栓回収療法(単独or rt-PAと併用) | 超急性期のゴールデンタイム |
| 4.5〜9時間(一部24時間まで) | 血栓回収療法(機械的血栓除去) | 大血管閉塞が画像で確認できる場合 |
| 9〜24時間以上 | 血栓回収療法(一部の選ばれた患者のみ) | DAWN/DEFUSE-3基準を満たす場合 |
| 24時間以降 | 急性期治療は終了 → 再発予防+リハビリ中心 | – |
1. 超急性期治療(発症〜数時間)
| 治療法 | 内容 | 適応 | 効果(数字でわかる) | 主なリスク |
|---|
| rt-PA静注療法 (血栓溶解薬) | 点滴で血栓を溶かす薬(アルテプラーゼ) | 発症4.5時間以内 重症度・年齢などの条件あり | 3ヶ月後に「ほぼ後遺症なく日常生活に戻れる」確率が約1.5倍にUP | 脳出血(約5〜6%) → 厳格な適応判定が必要 |
| 血栓回収療法 (機械的血栓除去) | 足の付け根からカテーテルを入れて血栓を直接吸い出すor掴んで取る | 大血管(内頸動脈・中大脳動脈M1)が詰まっている 2025年現在は発症24時間以内の選ばれた患者まで拡大 | 3ヶ月後に「歩ける・自立できる」確率が2〜4倍に跳ね上がる(特に重症例) | 血管損傷、出血(約5〜10%) |
2025年の現実:
「rt-PA+血栓回収療法」のダブル治療が可能な病院(総合脳卒中センター=CSC)は全国約900施設。
救急車では「血栓回収ができる病院に直行」が基本です(バイパス搬送)。
2. 急性期〜回復期の治療(入院中)
| 目的 | 主な治療内容 |
|---|
| 脳浮腫対策 | マンニトール、グリセオール点滴 重症なら開頭減圧術 |
| 血圧管理 | 最初の24〜48時間は高め(180〜200mmHg程度)に保つことが多い → 詰まった先の脳に血を届けるため |
| 再発予防開始 | 心原性なら即日抗凝固薬(DOAC or ヘパリン) ラクナ・アテロームなら抗血小板薬(アスピリン+クロピドグレルなど) |
| 肺炎予防 | 早めの離床、嚥下評価、必要なら胃瘻造設 |
3. 再発予防薬(退院後も一生続ける)
| 脳梗塞の種類 | 第一選択薬(2025年現在) |
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| ラクナ梗塞 | シロスタゾール or アスピリン+クロピドグレル |
| アテローム血栓性 | アスピリン or クロピドグレル+スタチン(必ず) |
| 心原性脳塞栓症 | DOAC(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ダビガトラン)が第一選択 ※ワルファリンはほぼ過去の薬に |
4. リハビリテーション
| 時期 | 内容 |
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| 発症直後〜1週間 | 寝たきり予防、関節拘縮予防、座位練習 |
| 1〜4週間 | 本格的リハビリ開始(理学・作業・言語療法) 1日最大3時間(9単位)まで保険適用 |
| 発症3〜6ヶ月 | 回復のピーク(特に最初の3ヶ月が一番伸びる) |
| 6ヶ月以降 | 維持期リハビリ(介護保険で週1〜数回) |
最新トピック
- 血栓回収療法が24時間まで拡大(DAWN基準・DEFUSE-3基準)
- テンケテプラーゼ(新しい血栓溶解薬)が一部施設で使用開始(rt-PAより効果が高く出血リスクが低い可能性)
- AIによる迅速画像診断(詰まっている血管・救える脳の量を数秒で判定)
まとめ
- 0〜4.5時間 → rt-PA点滴
- 大きな血管が詰まってる → 血栓回収療法(24時間まで可能)
- それ以降は → 再発予防薬+徹底リハビリ