【要注意】頭部打撲で起こる主要な診断名と症状:脳挫傷・脳震盪・硬膜下血腫など

「ただの打ち身」と軽視してはいけないのが、頭部への強い衝撃です。脳が直接損傷を受けたり、脳を覆う膜の間で出血(血腫)が起こったりすると、命に関わる事態に発展する可能性があります。本記事では、頭部への打撲によって生じる主要な診断名を、「脳組織の直接的な損傷(脳挫傷、脳震盪など)」と「脳を覆う膜の間の出血(硬膜外・下血腫など)」の2つのカテゴリーに分けて詳しく解説します。特に、自覚症状がなくても数週間〜数か月後に発症する慢性硬膜下血腫など、症状が遅れて出てくるケースもあるため、打撲後の注意点と、速やかに受診すべきサインについてもご紹介します。

脳の打撲による主な診断名

1. 脳組織の直接的な損傷

診断名概要補足
脳挫傷(のうざしょう)頭部への衝撃により、脳組織そのものが損傷(打ち身)を受け、細胞が壊れたり出血したりした状態。損傷部位の直下(クー外傷)だけでなく、反対側(コントラクー外傷)にも発生することがあります。
脳挫傷性血腫脳挫傷に伴って、脳組織内に出血が塊(血腫)を作った状態。外傷性脳内血腫とも呼ばれます。血腫の大きさによっては、緊急手術が必要になることがあります。
脳震盪(のうしんとう)脳に構造的な損傷(打撲の跡など)はないものの、一時的に脳の機能が低下している状態。CTやMRIなどの画像検査では異常が見られないことが多いですが、意識障害や記憶喪失などが起こります。

2. 脳を覆う膜の間の出血(外傷性頭蓋内血腫)

頭蓋骨と脳の間にある「硬膜」「くも膜」などの間で出血が起こり、血腫が脳を圧迫する状態です。

診断名出血部位発生時期
急性硬膜外血腫頭蓋骨と硬膜の間外傷後数時間以内(比較的早い)
急性硬膜下血腫硬膜の間外傷後数時間以内(比較的早い)
慢性硬膜下血腫硬膜の間外傷後数週間〜数か月(遅れて発症)
外傷性くも膜下出血くも膜の下(脳の表面)外傷と同時に発生

これらの診断名以外にも、強い衝撃が広範囲の脳神経線維に損傷を与えるびまん性軸索損傷や、頭蓋骨骨折などが同時に発生することもあります。

頭部に強い打撲を受けた場合は、自覚症状がなくても症状が遅れて出てくることがあるため、速やかに医療機関(特に脳神経外科)を受診し、適切な検査(CTやMRIなど)を受けることが重要です。