2025年の日本国内インフルエンザ（2025/2026シーズン）は、例年より大幅に早く流行が開始され、異例の急拡大が見られました。国立感染症研究所（NIID）や厚生労働省の定点医療機関報告（約5,000機関）に基づくデータでは、9月下旬から患者数が急増し、12月時点で全国的に警報レベルを超える状況となっています。主な原因として、COVID-19後の免疫低下（免疫ギャップ）、海外からのウイルス持ち込み増加、A型H3N2サブクレードKの変異株流行が指摘されています。
1. 流行の経過と週次患者数
2025/2026シーズン（2025年9月〜12月10日時点）と2024/2025シーズン（2024年9月〜同期間）の日本全国インフルエンザ感染者数の週次推移比較表です。去年のデータは、2024/2025シーズンの同時期を基準にまとめました。データソースは国立感染症研究所（NIID）と厚生労働省の定点医療機関報告に基づきます。
| 週次 | 期間 | 2025/26シーズン（今年） 定点当たり報告数 / 推計患者数（累積） | 2024/25シーズン（去年） 定点当たり報告数 / 推計患者数（累積） | 備考（今年 vs 去年） |
|---|---|---|---|---|
| 第36週 | 9/2 – 9/8 | 0.32 / – | 0.28 / – | ほぼ同水準、流行前 |
| 第39週 | 9/23 – 9/29 | 1.96 / 約9万人 | 0.45 / 約2万人 | 今年：早期流行開始（注意報超え） |
| 第42週 | 10/14 – 10/20 | 2.36 / 約20万人 | 0.62 / 約3万人 | 今年：沖縄突出、今年2倍超 |
| 第45週 | 11/4 – 11/10 | 14.90 / 約140万人 | 1.24 / 約6万人 | 今年：25都道府県注意報、急増 |
| 第46週 | 11/11 – 11/17 | 37.73 / 約350万人 | 2.15 / 約10万人 | 今年：全国警報、今年3.5倍 |
| 第47週 | 11/18 – 11/24 | 48.21 / 約580万人 | 3.89 / 約18万人 | 今年：39都道府県警報、今年3倍 |
| 第48週 | 11/25 – 12/1 | 56.84 / 約830万人 | 4.48 / 約22万人 | 今年：最速ペース、今年4倍 |
| 第49週 | 12/2 – 12/8 | 61.12 / 約1,100万人 | 6.12 / 約30万人 | 今年：ピーク継続、今年3.7倍 |
| 第50週（速報） | 12/9 – 12/15（予測） | 64.39 / 約1,300万〜1,400万人 | 9.10 / 約45万人 | 今年：1999年以降最高、今年3倍超 |
2. 累積感染者数と推計
- 累積報告数: 2025年9月2日～12月上旬（第49週頃）で、定点報告ベース約500万件超。
- 推計総数: NIIDによると、2024年9月2日～2025年1月26日で約952万件（実報告の約10-20倍の推計）。12月10日時点では、約700-800万件と見込まれ、過去10年で最悪レベル。
- 重症化・死亡: 入院例急増（特に高齢者・小児）。抗ウイルス薬耐性株（H275Y変異）は低いが監視中。死亡数は未集計だが、COVID-19同時流行で複合リスク高。
3. 都道府県別分布
- 高発生地域: 北日本・関東・九州中心。12月ピーク時:
- 大分: 104.84/定点（最高）
- 宮城: 80.02
- 埼玉: 70.01
- 神奈川・千葉: 25-28
- 沖縄: 早期14.38（南国特異）
- 注意報・警報: 12月時点で全47都道府県中、39で警報（30/定点超）。九州・東北で顕著。
- 低発生地域: 秋田・山形・富山・沖縄（相対的）。ただし全域増加傾向。
4. ウイルス株と特徴
- 主な株: A型H3N2（94%）。サブクレードK変異株が急速拡散。2025/26ワクチンは別株ベースのため、効果不明瞭。
- 同時流行: 新型コロナとの共存で、検査・受診負担増。B型は後期に増加予想。
5. 背景要因と対策
- 要因: COVID-19後のマスク緩和による免疫低下、観光再開（南半球株流入）、気温低下。変異株の感染力向上。
- 対策推奨:
- 予防: ワクチン接種（10月推奨、効果持続6ヶ月）。手洗い・マスク・換気。
- 受診: 発熱時即時検査（抗原キット活用）。抗ウイルス薬早期投与。
- 注意喚起: 高齢者・基礎疾患保有者は重症化リスク高。学校・職場での集団感染防止。
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