カンピロバクターによる食中毒の症状や治療について

カンピロバクターによる食中毒は、日本を含む世界中で頻繁に発生する食中毒の一つで、特に生肉(特に鶏肉)や汚染された水からの感染が主な原因です。以下では、カンピロバクター食中毒の症状原因予防治療、および予後について詳しく説明します。


1. カンピロバクター食中毒とは?

カンピロバクター属細菌は、特に「カンピロバクター・ジェジュニ」と「カンピロバクター・コリ」が人間に食中毒を引き起こす主な菌種です。この細菌は酸素が少ない環境でよく繁殖し、食材(特に鶏肉など)や水が汚染されている場合に感染の原因となります。

主な感染源

  • 鶏肉:特に生や加熱不足の鶏肉が原因として多いです。
  • 未殺菌の水や牛乳:生水や非殺菌の牛乳を飲むことで感染することがあります。
  • 動物の糞便:犬や猫、家畜などの動物がカンピロバクターを保菌していることもあります。
  • 二次感染:感染者の便を通じて他の人に広がる場合もあります。

2. 症状

カンピロバクター感染後、2~5日程度の潜伏期間を経て、以下の症状が現れます。

  • 発熱:感染初期に高熱が出ることがあります。
  • 腹痛:激しい腹痛がしばしば見られます。痛みはしばしば下腹部に集中します。
  • 下痢:水様性の下痢が主な症状です。便に血が混ざることもあり、1日数回以上の頻繁な排便があります。
  • 吐き気や嘔吐:一部の患者では吐き気や嘔吐を伴うことがあります。

症状は通常1週間程度で改善しますが、重症化すると脱水症状や体力低下が起こり、まれに合併症として深刻な後遺症が残ることもあります。


3. 予防

カンピロバクター食中毒は、正しい食品管理や調理を行うことでほとんど予防が可能です。以下は一般的な予防方法です。

1. 肉の加熱

  • 鶏肉やその他の肉を十分に加熱することが最も重要です。カンピロバクターは、中心温度が75℃以上で加熱することで死滅します。
  • 特に鶏肉は生や半生で食べないように注意しましょう。焼き鳥やたたきなどはリスクが高いです。

2. 食品の取り扱い

  • 生肉を触った手や調理器具(まな板、包丁など)はすぐに洗浄・消毒することが必要です。
  • 生肉と他の食品(特にサラダなど加熱しない食品)を分けて調理することも重要です。

3. 清潔な水と食品を使用する

  • 生水や未殺菌の牛乳を飲むことは避けましょう。飲料水や料理には必ず安全な水を使用してください。

4. 手洗い

  • 調理前や調理後、特に生肉を扱った後は必ず石鹸で手を洗うことが大切です。

4. 治療

カンピロバクター感染症は、軽症の場合には特別な治療を行わずに自然治癒することが多いです。しかし、重症の場合や症状が長引く場合には、以下の治療が行われます。

1. 水分補給

  • 下痢による脱水が起こりやすいため、十分な水分補給が重要です。軽度の脱水の場合は経口補水液(ORS)を使用することが推奨されます。

2. 抗菌薬治療

  • 重症の場合や高リスク患者(例えば免疫力が低下している人)には、抗菌薬(抗生物質)が処方されることがあります。主に使われるのはエリスロマイシンシプロフロキサシンなどです。
  • 抗生物質は、通常、症状が現れてから早期に使用することで、感染期間を短縮し、重症化を防ぐ効果が期待されます。

3. 対症療法

  • 痛みや発熱に対して、鎮痛剤や解熱剤が処方されることがあります。

5. 予後

ほとんどのカンピロバクター感染症は、1週間程度で自然治癒します。しかし、まれに以下のような合併症が発生することがあります。

1. ギラン・バレー症候群

  • カンピロバクター感染の後に、自己免疫反応によって神経障害が発生することがあります。これをギラン・バレー症候群と言い、手足のしびれや筋力低下、麻痺などの症状が現れます。重症化すると呼吸困難を引き起こすこともあり、緊急対応が必要です。
  • ギラン・バレー症候群は、カンピロバクター感染後の数週間以内に発症することが多く、長期間のリハビリが必要になる場合もあります。

2. 反応性関節炎

  • 感染後、関節に痛みや炎症を引き起こす反応性関節炎が発症することもあります。数週間から数ヶ月にわたって関節痛が続くことがあり、特に膝や足首に影響を与えます。

3. 重度の脱水

  • 重度の下痢が続くと、脱水症状が深刻化し、特に乳幼児や高齢者では命に関わる可能性があります。この場合、速やかな医療処置が必要です。

まとめ

カンピロバクターによる食中毒は、生肉や汚染された水などを介して感染することが多く、腹痛や下痢、発熱といった症状が現れます。ほとんどのケースでは1週間程度で自然治癒しますが、重症化することもあるため、十分な水分補給や抗生物質治療が行われることもあります。予防としては、特に生肉の取り扱いや加熱処理、清潔な水の使用、手洗いが重要です。

予後は良好ですが、まれにギラン・バレー症候群や反応性関節炎といった合併症が発生することがあるため、注意が必要です。