クモ膜下出血（SAH）は、一刻を争うコイル塞栓術やクリッピング手術など、高度な治療を必要とするため、総医療費は数百万円規模に及びます。この経済的な側面は、患者さんやご家族にとって大きな不安要素となり得ます。
クモ膜下出血の治療費用と診療報酬 2025年現在の目安（日本）
クモ膜下出血（SAH）の治療費用は、主な原因である脳動脈瘤破裂に対する治療（コイル塞栓術やクリッピング手術）が中心で、入院期間・重症度・合併症（血管れん縮や水頭症）によって変動します。公的医療保険が適用され、患者負担は1〜3割（所得による）。高額療養費制度で月額上限（例: 一般所得で約8万円）が適用可能で、実際の負担は軽減されます。総医療費は数百万円規模ですが、自己負担は抑えられます。以下に、2025年時点のデータに基づく目安をまとめます。数字は平均値で、病院や地域で変動します。
1. 入院・治療費用の目安（患者自己負担3割の場合）
入院期間の平均は約2〜4ヶ月（急性期＋回復期）。総医療費は200〜500万円程度ですが、高額療養費で実質負担は月8万円以内に収まります。
| 重症度・内容 | 入院期間目安 | 総医療費（保険適用前） | 自己負担目安（高額療養費適用後） | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 軽症（Grade1〜2、コイル、小出血） | 2〜6週間 | 150〜250万円 | 10〜25万円（月8万円×2〜3ヶ月） | 短期入院中心。リハビリ追加で+5〜10万円。 |
| 中等症（Grade3、コイル、意識はっきり） | 2〜4ヶ月 | 250〜400万円 | 20〜40万円（月8万円×3〜5ヶ月） | 回復期リハビリ病院転院で費用増。リハビリ1回3,000円（3割）。 |
| 重症（Grade4〜5、意識障害、手術合併症） | 4〜10ヶ月 | 400万円以上 | 30〜60万円（月8万円×6ヶ月以上） | クリッピング手術追加で+20万円。ICU入室で+30万円。 |
| クリッピング手術（開頭） | 3〜5ヶ月 | 300〜500万円 | 25〜50万円 | コイルより入院長く費用高め。 |
| 血管れん縮・水頭症合併 | +1〜3ヶ月延長 | +100万円以上 | +10〜20万円 | VPシャント手術追加で+10万円。 |
- 内訳例（中等症、3ヶ月入院）:
- 入院基本料: 約40万円（1日4,000円×90日、3割）。
- 検査（CT/MRI/血管造影）: 10〜15万円。
- 薬剤・処置（エリル点滴など）: 15〜25万円。
- 手術（コイル塞栓）: 50〜100万円。
- リハビリ（PT/OT/ST、1日3時間）: 20〜30万円。
- 高額療養費制度: 月の自己負担が上限超えたら還付（申請必須）。70歳以上はさらに低め（月5〜6万円上限）。
- 注意: 2025年は医療DX推進で電子カルテ共有が義務化され、検査費が微減傾向。民間医療保険で補う人も多いです。
高額療養費制度を徹底解説！医療費の家計負担を軽減するセーフティネットの仕組み、申請方法、自己負担限度額まで
2. 診療報酬の主な点数（2025年4月改定版）
診療報酬は1点=10円。病院が保険者に請求する点数で、患者負担はこれの1〜3割。クモ膜下出血関連の主な項目を抜粋（厚労省点数表に基づく）。2025年6月以降、急性期加算などで施設基準の届け出が必要な項目が増えています。
| 診療項目 | 点数（1日あたり目安） | 金額目安（1点10円） | 適用条件・備考 |
|---|---|---|---|
| 入院基本料（7:1、脳卒中対応） | 1,844点 | 18,440円 | 急性期病院。脳卒中患者比率20%以上で加算あり。 |
| 急性期充実体制加算 | 500〜1,000点 | 5,000〜10,000円 | 重症SAH。2025年6月以降、救急用サマリ導入必須。 |
| 救命救急入院料1 | 1,790点 | 17,900円 | ICU入室時。重症クモ膜下出血に必須。 |
| 脳動脈瘤コイル塞栓術 | 約50,000〜80,000点（1回） | 500,000〜800,000円 | カテーテル治療。3割負担で15〜24万円。 |
| 脳動脈瘤クリッピング術 | 約60,000〜100,000点（1回） | 600,000〜1,000,000円 | 開頭手術。3割負担で18〜30万円。 |
| 脳室ドレナージ | 5,000〜10,000点（1回） | 50,000〜100,000円 | 水頭症合併時。 |
| リハビリテーション料（PT） | 360点（20分） | 3,600円 | 1日3単位以上可能。回復期で重点。 |
| 神経学的検査（CT/MRI） | 1,000〜3,000点 | 10,000〜30,000円 | 診断時。 |
- 総額例: 中等症1ヶ月で約15〜25万点（150〜250万円）。病院のクラス（DPC対象か）で変動。
- 2025年改定ポイント: 医療DX関連で電子処方箋・カルテ共有の加算強化（+0.5〜1%）。脳卒中ガイドライン改訂で血圧管理・血管内治療の報酬微増。リハビリ点数は維持期で+2%傾向。
負担軽減のヒント
- 公的支援: 高額療養費＋限度額適用認定証（事前申請で窓口負担上限）。
- 民間保険: 入院日額5,000円タイプでカバー可能。三大疾病特約で一時金50〜100万円。
- 相談先: 病院の医療ソーシャルワーカー。家族歴があれば事前相談を。
