
クモ膜下出血(SAH)は、一律に同じ病気として扱われることが多いですが、その予後や治療方針は出血の原因によって大きく異なります。脳ドックで発見される未破裂動脈瘤の破裂が全体の80%以上を占める一方、動脈瘤が見つからない**非動脈瘤性クモ膜下出血(NA-SA)**は予後が比較的良好です。
クモ膜下出血(SAH)は「出血した場所」や「形」ではなく、原因によって大きく分類されます。
日本脳神経外科学会・ガイドラインでもこの分類が標準です。
クモ膜下出血の種類(原因別)2025年現在
| 種類 | 頻度(日本) | 主な年齢・性別 | 特徴・予後・治療のポイント |
|---|---|---|---|
| 1. 脳動脈瘤破裂性 | 80〜85% | 40〜70歳、女性に2倍多い | 一番多い。コイル塞栓orクリッピング必須。再出血率が極めて高い(最初の24時間で20〜30%) |
| 2. 非動脈瘤性クモ膜下出血(NA-SA) | 約10% | 40〜60歳 | 動脈瘤が見つからない。出血は脳の表面中央(大脳縦裂・前頭葉間)に多い。予後は比較的良い |
| 3. 脳動静脈奇形(AVM)破裂 | 3〜5% | 20〜40歳、男性やや多い | 若い人に多い。けいれんを伴うことも。治療は手術・放射線・塞栓術の組み合わせ |
| 4. もやもや病に伴う | 1〜2% | 小児〜30代、日本人に特有 | もやもや血管から出血。脳梗塞を合併しやすい |
| 5. 脊髄動静脈奇形・瘻 | 1%未満 | 30〜60歳 | 腰や背中が激しく痛い→その後頭痛。脊髄の血管が原因 |
| 6. 解離性脳動脈瘤 | 1〜2% | 30〜50歳 | 椎骨動脈解離が多い。コイルよりステント治療が主流に |
| 7. 脳腫瘍・血液疾患など | 1%以下 | 全年齢 | 白血病、凝固異常、抗凝固薬関連など |
一目でわかる比較表
| 種類 | 頭痛の強さ | 再出血リスク | 30日死亡率 | 治療の緊急性 | 脳ドックで予防できる? |
|---|---|---|---|---|---|
| 動脈瘤破裂性 | ★★★★★ | 極めて高い | 35〜40% | 最優先 | ◎(MRAでほぼ発見可) |
| 非動脈瘤性(NA-SA) | ★★★★☆ | 低い | 10%未満 | 緊急性やや低 | ○(一部は経過観察) |
| AVM | ★★★★☆ | 中程度 | 15〜20% | 急ぐ | ◎ |
| もやもや病 | ★★★☆☆ | 中程度 | 20%前後 | 急ぐ | ◎ |
家族が知っておくべきポイント
- 90%以上は「脳動脈瘤」か「非動脈瘤性」のどちらかです。
- 動脈瘤が見つかった時点で「未破裂脳動脈瘤」→ 破裂する前にコイルやクリップで治療すればほぼ100%予防できます。
- 頭痛が「今までで一番強い」+嘔吐が1回でもあれば、動脈瘤破裂を最優先に疑ってください(非動脈瘤性でも治療は必要ですが、予後は全然違います)。
