「サービス業（他に分類されないもの）」に含まれる警備業、廃棄物処理業、自動車整備業などは、労働環境の厳しさから離職率が高い傾向にあります。これらの職種は、社会の安全や生活インフラを支える重要な役割を担っていますが、「きつい・汚い・危険（3K）」といったイメージや、不規則な勤務体制、低い賃金水準といった課題を抱えています。本記事では、これらサービス業の離職要因を、「労働条件」「待遇」「業務負担」「キャリア形成」の4つの観点から詳細に解説します。
サービス業（他に分類されないもの）の離職率（参考データ）
産業全体でのデータは、個別の職種（警備、廃棄物処理など）の離職率を合計したものとなります。
| 区分 | サービス業（他に分類されないもの）の離職率 | 全産業の平均離職率 |
| 通年の離職率（年次） | 18.7%（令和4年） | 15.0%（令和4年） |
| 新規大卒就職者の 3年以内離職率 | 45.0%（令和4年3月卒業者） | 33.8%（令和4年3月卒業者） |
| 新規高卒就職者の 3年以内離職率 | 52.2%（令和4年3月卒業者） | 37.9%（令和4年3月卒業者） |
1. 労働時間の問題（不規則な勤務と過酷な環境）
社会インフラに関わる職種が多く、お客様の都合や社会の動きに合わせて対応する必要があるため、労働時間や環境が厳しくなりがちです。
- 不規則な勤務体制と長時間拘束（警備業、自動車整備業）:
- 夜勤・徹夜勤務の常態化: 警備業では、施設やイベントの状況に応じて夜間や早朝の勤務が多く、生活リズムが乱れやすいです。
- 納期や緊急対応による残業: 自動車整備業では、車検や緊急修理への対応により、長時間残業が発生しやすいです。
- 過酷な環境下での労働（警備業、廃棄物処理業）:
- 屋外での過酷さ: 警備業（交通誘導など）や廃棄物処理業は、真夏や真冬でも屋外で長時間働く必要があり、肉体的な負担が大きいです。
- 早朝からの業務: 廃棄物収集は、交通量の少ない早朝から業務が始まるため、生活リズムが一般と異なります。
2. 待遇の問題（業務負担に見合わない賃金）
業務の過酷さや専門性、社会的役割の重要性に対し、賃金水準が低いと感じる人が多いです。
- 賃金水準の低さ:
- 肉体労働・危険度とのミスマッチ: 廃棄物処理業や警備業など、身体的な負担や危険が伴うにもかかわらず、給与水準が他産業に比べて低い傾向があります。
- 技術や資格への評価不足（自動車整備業）: 整備士資格や高度な技術を持っていても、十分な給与として反映されないと感じるケースがあります。
- 経費の自己負担:
- 自動車整備士が工具を、警備員が防寒具などを一部自己負担させられるなど、業務に必要な経費が給与を圧迫する場合があります。
3. 業務負担と精神的ストレス
「3K」と呼ばれる要因に加え、仕事に対する社会的な評価の低さが、精神的なストレスにつながっています。
- 3Kの環境（廃棄物処理業、自動車整備業）:
- 衛生面・臭気によるストレス: 廃棄物処理業は、避けられない衛生面・臭気による精神的ストレスが大きい。
- 肉体的重労働: 重量物の運搬や車の整備作業など、腰や関節に負担がかかる重労働が多い。
- 社会的なイメージによる精神的負担:
- 警備業や廃棄物処理業は、社会的に「きつい」「汚い」といったネガティブなイメージを持たれやすく、職務に対するモチベーションを維持しにくい。
- 緊急時対応のプレッシャー（警備業）:
- 事故やトラブル、災害発生時などに冷静に対応しなければならないという、強い精神的なプレッシャーがかかります。
4. キャリア形成・教育体制の問題
特定の技術職である自動車整備業を除き、昇進やスキルアップの道筋が不明確な場合、将来への不安を感じやすいです。
- キャリアパスの不明確さ（警備業、廃棄物処理業）:
- 業務内容が定型的である場合、現場作業員から管理職への昇進ルートが見えにくいことがあります。
- 評価制度が不明確で、頑張りが給与や地位に結びつきにくいと感じる。
- 技術習得の負担（自動車整備業）:
- 技術革新が速いため、常に自己学習や資格取得が求められますが、そのための時間や金銭的なサポートが不十分な企業がある。
- 指導の属人化:
- 現場でのOJT（実務訓練）が中心となり、指導内容が先輩個人の裁量に委ねられがちで、教育にばらつきが生じやすい。
負の連鎖の構造
これらのサービス業における離職は、「低賃金で負担が大きい→人が定着せず人手不足になる→残った社員一人当たりの負担がさらに増す→労働環境が悪化し、さらに人が辞める」という構造的な問題によって引き起こされています。特に、社会に不可欠なサービスであるにもかかわらず、その労働環境と待遇が改善されないことが、離職率が高い最大の要因です。
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