パルスオキシメータとSpO₂は、呼吸や循環の状態を評価するために重要な医療機器と指標です。それぞれの特徴、使用方法、そして臨床での重要性について説明します。
1. パルスオキシメータ (Pulse Oximeter)
概要:
- パルスオキシメータは、血液中の酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を非侵襲的に測定する装置です。
- 指先や耳たぶ、足先などにクリップ状のセンサーを装着し、赤外線と赤色光を使って動脈血中の酸素レベルを測定します。
仕組み:
- センサー部分には、光を発するLEDとその光を受け取るフォトダイオードがあります。
- LEDが発する赤色光(660nm)と赤外線光(940nm)が組織を通過し、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの吸収差を測定することで酸素飽和度を算出します。
測定値:
- SpO₂: 動脈血中の酸素飽和度を示し、正常範囲は95~100%です。
- 脈拍数: 心拍の数を測定します。正常な成人では60~100回/分です。
臨床での使用:
- 低酸素血症の早期発見。
- 人工呼吸器の調整、麻酔中のモニタリング。
- 慢性呼吸器疾患や心疾患の管理。
- 一酸化炭素中毒やその他の呼吸不全の評価。
メリット:
- 非侵襲的で簡単に測定可能。
- リアルタイムで酸素飽和度の変化が確認できる。
- 低コストで持ち運びが容易。
デメリット:
- 低血圧、寒冷、貧血、末梢循環不全があると正確な測定が困難。
- ネイルポリッシュや人工爪が測定を妨げることがある。
2. SpO₂ (Peripheral Capillary Oxygen Saturation)
概要:
- SpO₂はパルスオキシメータで測定される酸素飽和度の指標であり、動脈血中の酸素化ヘモグロビンの割合を示します。
- SpO₂は、呼吸機能の指標として非常に重要であり、酸素療法や人工呼吸器の管理において欠かせない数値です。
正常値と異常値:
- 正常値: 95~100%。この範囲は酸素供給が十分であり、体の各組織に適切な酸素が供給されていることを示します。
- 軽度低酸素血症: 90~94%。注意が必要なレベルで、酸素投与を検討する場合もあります。
- 中等度低酸素血症: 80~89%。酸素の投与が必要となり、原因の精査と治療が必要。
- 重度低酸素血症: 80%未満。緊急の対応が必要であり、酸素不足が命に関わるレベルです。
臨床での意義:
- SpO₂の低下は、呼吸不全、心不全、貧血、一酸化炭素中毒などの病態を示唆する重要なサイン。
- 一定の酸素飽和度を保つことは、全身の組織や臓器の正常な機能を維持するために重要です。
注意点:
- 正常なSpO₂値でも、血液ガス測定で酸素と二酸化炭素のバランスが崩れている場合があるため、SpO₂はあくまで補助的な指標。
- 一酸化炭素中毒では、SpO₂が正常値でも実際の酸素供給は不足していることがあり、専用の測定器が必要です。
まとめ
- パルスオキシメータは、簡便かつ非侵襲的に酸素飽和度を測定できる重要なツールであり、SpO₂は酸素供給の状態を示す基本的な指標です。
- 臨床でのモニタリングにおいて、これらの情報は患者の呼吸状態の評価と治療方針の決定に不可欠です。
- 正確な使用と解釈が求められ、臨床状況に応じて他の診断手段と併用することが重要です。