
アメリカ
アメリカでの血液提供には、大きく分けて2つの種類があり、それぞれ仕組みが異なります。
1. 輸血用の献血(無償)
アメリカでも、日本と同様に**米国赤十字社(American Red Cross)**が主体となって、輸血を目的とした献血をボランティアで募っています。この献血に対しては、基本的に金銭的な報酬はありません。ただし、献血を奨励するために、アマゾンのギフト券などを謝礼として提供するキャンペーンが行われることがあります。
2. 血漿(けっしょう)提供(有償)
一方で、アメリカには**「プラズマセンター」**と呼ばれる民間の施設が多数あり、血漿分画製剤の原料となる血漿を集めています。これらのセンターでは、血漿を提供したドナーに対し、金銭的な報酬が支払われることが一般的です。
この有償の血漿提供は、輸血用の全血献血とは明確に区別されており、主に以下の特徴があります。
- 目的: 輸血用ではなく、血漿から特定のタンパク質を抽出して製造される医薬品(血漿分画製剤)の原料とするためです。
- 運営: 主に製薬会社や独立系企業が運営する民間の施設で行われます。
- 報酬: センターや需要によって異なりますが、1回の提供につき20〜30ドル(約2,300〜3,500円)程度の報酬が支払われることが多いようです。新規ドナー向けのキャンペーンでは、さらに高額な報酬が設定されることもあります。
- 安全性: 有償の血漿提供であっても、安全性確保のために厳しい基準が設けられています。ドナーの身元確認や、初回は検査のみを行うなど、感染リスクを減らすための対策がとられています。
このように、アメリカでは、輸血用の血液はボランティアによる無償献血、医薬品の原料となる血漿は有償提供という、異なるシステムが共存しています。
ドイツ
ドイツでは、アメリカと同様に、献血のシステムが日本とは少し異なります。法律で「売血」が認められており、献血者に対して金銭的な謝礼や報酬が支払われることがあります。
主な特徴は以下の通りです。
1. ドイツ赤十字社による献血
ドイツ赤十字社が中心となって血液事業を行っており、輸血用の血液は無償の献血で集められています。しかし、献血者を募るために、様々な工夫が凝らされています。
- 謝礼品: 初回献血者やリピーターを増やすためのキャンペーンとして、謝礼品が用意されることがあります。
- 軽食: 献血後に軽食や飲み物が提供されます。
2. 有償の血漿提供
アメリカと同様に、ドイツでも血漿分画製剤の原料となる血漿については、有償で提供される仕組みがあります。
- 報酬: ドナーには金銭的な報酬が支払われることが法令で認められています。血漿提供1回につき25ユーロ(日本円で約3,500円)程度までの金銭が提供されることが多いようです。
3. 特殊なシステム
ドイツでは、輸血用の血液製剤の原料となる全血をドイツ赤十字社が収集し、その一部(約60%)を血漿分画製剤製造事業者に売却しています。その収益を、病院に供給する血液製剤の価格を下げるために利用しているという独特の仕組みも存在します。
このように、ドイツでは、輸血用の全血献血は基本的に無償のボランティアですが、献血を促すための謝礼や、血漿の有償提供という形で、金銭が絡むシステムも共存しているのが現状です。