マイコプラズマ肺炎は、**Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ・ニューモニエ)**という細菌によって引き起こされる肺炎です。通常、軽症から中等度の肺炎を引き起こし、風邪に似た症状が特徴です。特に、子供や若い成人の間でよく見られる感染症ですが、どの年齢層でも発症する可能性があります。
特徴と原因
- 原因菌:マイコプラズマ・ニューモニエという非常に小さな細菌が原因です。他の多くの細菌とは異なり、細胞壁を持たないため、特定の抗生物質(ペニシリン系など)は効きません。
- 感染経路:飛沫感染(咳やくしゃみで放出される飛沫を吸い込むことで感染)によって広がります。人から人へ感染しやすいですが、重症化しにくいのが特徴です。
症状
マイコプラズマ肺炎の症状は、発症から数日から1週間程度かけて徐々に現れます。初期症状は風邪に似ていますが、次第に以下のような特徴的な症状が出てきます。
- 発熱(中程度の発熱が多い)
- 咳(特に乾いた咳が続くのが特徴。夜間に悪化しやすい)
- 喉の痛み
- 疲労感・倦怠感
- 頭痛
- 筋肉痛
- 呼吸困難(重症化した場合)
- 耳の痛み(まれに、耳の感染症(中耳炎)を伴うことも)
特に、長期間にわたって続く乾いた咳が、マイコプラズマ肺炎の特徴的な症状の一つです。風邪やインフルエンザと似た症状で始まるため、最初は区別がつきにくいですが、咳が数週間続くことがあり、徐々に他の病気と区別されます。
診断
- 臨床症状の確認:乾いた咳や中程度の発熱が続く場合、マイコプラズマ肺炎の疑いがあります。
- 血液検査や咽頭ぬぐい液検査:血液中の抗体や細菌の検出により診断します。
- 胸部X線:症状が軽くても肺に異常が見られる場合があるため、肺の画像診断が行われることもあります。
治療
マイコプラズマ肺炎は細菌による感染症ですが、通常の細菌とは異なり、細胞壁を持たないため、一般的な抗生物質(ペニシリン系やセフェム系)は効きません。代わりに、マクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)やテトラサイクリン系(ドキシサイクリンなど)、ニューキノロン系(レボフロキサシンなど)の抗生物質が使用されます。
- 軽症の場合:自宅療養で十分に回復することが多いです。
- 重症例や長引く場合:抗生物質の使用が推奨されますが、抗生物質に対する耐性菌も増加しているため、適切な薬の選択が重要です。
合併症
マイコプラズマ肺炎は通常軽症で、適切な治療を受ければ回復しますが、まれに以下の合併症を引き起こすことがあります。
- 中耳炎
- 脳炎
- 心筋炎
- 皮膚炎
特に、高齢者や免疫力が低下している人では、重症化するリスクが高まることがあります。
予防
- 手洗いや咳エチケットを徹底することで、感染を防ぐことができます。
- 換気の良い環境を保ち、集団生活(学校や職場など)では感染予防策を講じることが推奨されます。
- マイコプラズマ肺炎には特定のワクチンは存在しませんが、日常の衛生管理が重要です。
流行の傾向
マイコプラズマ肺炎は、特に5~15歳の子供や若者の間で流行することが多く、秋から冬にかけて流行することが多いです。学校や家庭内で感染が広がりやすく、集団感染の原因にもなりますが、流行のパターンは数年おきにピークを迎えることがあります。
まとめ
マイコプラズマ肺炎は、特に子供や若年層に多く見られる呼吸器感染症で、風邪やインフルエンザと似た症状が続くのが特徴です。通常は軽症で、適切な治療を受ければ回復することが多いですが、抗生物質の選択が重要です。