**オートPEEP(Auto-PEEP)**とは、人工呼吸器使用中に患者の呼気が完全に終了する前に次の呼吸が開始されることで、肺内に空気が残り続ける状態を指します。この現象は「動的過膨張」や「自発的な呼気終末陽圧」とも呼ばれます。主に閉塞性肺疾患(COPDや喘息など)の患者に見られることが多く、以下のような特徴があります。
特徴と発生メカニズム
- 残気量の増加: 呼気が不完全なまま次の吸気が開始され、肺内に空気が残った状態となります。これが繰り返されると、肺が膨張し続け、結果的に「過膨張」が起こります。
- 原因: 主な原因は呼気時間が短すぎる、気道の抵抗が高い(気道が狭い)、または呼吸回数が多いことです。これにより、肺からの空気の排出が不十分になります。
- 閉塞性疾患との関係: COPDや喘息などの閉塞性肺疾患の患者は、気道の閉塞があるため、呼気に時間がかかる傾向があります。このため、オートPEEPが発生しやすくなります。
影響
- 呼吸仕事量の増加: オートPEEPは肺内に追加の圧力を作り出すため、患者は自発呼吸を開始する際に追加の圧力を克服する必要があり、呼吸仕事量が増加します。
- 換気不全: 肺の過膨張により、換気が効率的に行えなくなり、二酸化炭素の蓄積や低酸素血症を引き起こすことがあります。
- 心血管系への影響: 肺の過膨張により、胸腔内圧が上昇し、心臓への血液還流が減少して、低血圧や心拍出量の低下を引き起こす可能性があります。
オートPEEPの予防と対策
- 呼気時間を確保する: 呼吸回数を減らし、呼気に十分な時間を確保することで、オートPEEPの発生を抑制します。**I比(吸気:呼気の比率)**を1:3以上に設定し、呼気が完了するように調整します。
- 適切な呼吸回数設定: 呼吸回数が多すぎると呼気が間に合わず、オートPEEPが発生しやすくなります。患者の状態に合わせて適切な呼吸回数を設定することが重要です。
- PEEP設定: 低いPEEPで換気を行うと、オートPEEPが過剰に発生する可能性があるため、適切なレベルのPEEP設定を維持します。ある程度の外的PEEP(エクスターナルPEEP)を設定することで、オートPEEPの影響を軽減することもあります。
- フロー制御: 気道抵抗が高い場合には、フローを増加させることで、吸気時間を短縮し、呼気時間を確保する方法もあります。
計測方法
オートPEEPは、人工呼吸器上で簡単に確認することができませんが、以下の方法で評価できます。
- 呼吸器回路を一時停止させた状態で、呼吸終末圧を測定します。もし気道内圧がPEEP以上に上昇していれば、それがオートPEEPです。
まとめ
オートPEEPは、人工呼吸器管理において重要な合併症の一つで、適切な設定と管理が必要です。特に閉塞性肺疾患の患者では、呼気時間の確保や適切なPEEP設定を行うことで、オートPEEPのリスクを軽減し、換気の効率を高めることが求められます。