人工呼吸器の呼吸回数について

人工呼吸器の設定では、呼吸回数と酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)の関係が非常に重要です。これらの設定は、患者の血中ガスのバランスを維持し、適切な酸素供給とCO2排出を確保するために調整されます。

1. 呼吸回数と二酸化炭素(CO2)

  • 呼吸回数の増加: 呼吸回数を増やすと、患者が1分間に呼吸する回数が増えるため、より多くのCO2が肺から排出されます。これにより、血中のCO2濃度(PaCO2)が低下し、呼吸性アルカローシスのリスクが高まります。
  • 呼吸回数の減少: 呼吸回数を減らすと、CO2の排出が減少し、血中のCO2濃度が上昇します。これは呼吸性アシドーシスのリスクを増加させます。

2. 呼吸回数と酸素(O2)

  • 酸素供給: 呼吸回数が直接酸素濃度(PaO2)に大きな影響を与えることは少ないですが、呼吸回数が極端に少ないと酸素が十分に肺に供給されない可能性があります。酸素供給は主に吸気時の酸素濃度(FiO2)と、呼吸の深さ(潮気量, VT)に依存します。
  • 換気効率: 呼吸回数が適切であれば、酸素とCO2の交換が効率的に行われ、酸素飽和度(SpO2)が維持されます。

3. 換気効率と酸素・二酸化炭素の関係

  • 過換気: 呼吸回数が過度に高い場合、過換気(hyperventilation)となり、CO2が過剰に排出され、低CO2血症(呼吸性アルカローシス)を引き起こす可能性があります。
  • 低換気: 呼吸回数が低い場合、低換気(hypoventilation)となり、CO2の排出が不十分となって高CO2血症(呼吸性アシドーシス)を引き起こす可能性があります。この状態では、酸素供給も不十分になる可能性があります。

4. 設定のバランス

  • 適切な呼吸回数の設定: 患者の状態に応じて、適切な呼吸回数を設定することが重要です。通常、成人では12〜20回/分が標準とされますが、病態によって調整が必要です。
  • 酸素供給の設定: 酸素飽和度を維持するために、吸気時の酸素濃度(FiO2)や、呼吸回数、潮気量、PEEP(呼気終末陽圧)などの設定を適切に調整します。

5. 臨床の応用

  • 高CO2血症の患者: 例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者では、CO2保持のリスクがあるため、呼吸回数を過度に増加させることを避けつつ、酸素化を維持する設定が求められます。
  • 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者: これらの患者では、低潮気量換気(low tidal volume ventilation)が推奨されており、呼吸回数を適切に設定しつつ、酸素化を改善するためにPEEPの調整が行われます。