人工呼吸器の圧力設定は、患者の呼吸状態に応じて適切な呼吸サポートを提供するために重要です。圧力設定は、換気の効果を最適化し、患者の肺にかかるストレスを最小限に抑えるために調整されます。
人工呼吸器の圧力設定の基本項目
- PEEP(Positive End-Expiratory Pressure)
- 意味: 呼気の終わりに保持する気道内の圧力。
- 目的: 肺胞の虚脱を防ぎ、酸素化を改善します。低酸素血症の管理や、肺の再膨張を促すのに有効です。
- 設定の目安: 通常5 cmH₂Oから始め、必要に応じて増減します。ARDSなどでは高めの設定が推奨されることがあります。
- PIP(Peak Inspiratory Pressure)
- 意味: 吸気時の最高圧力。吸気のピーク圧力で、肺にかかる最大の圧力です。
- 目的: 吸気量を確保するために必要な圧力ですが、過度に高いと肺損傷のリスクがあります。
- 設定の目安: 通常は20〜30 cmH₂Oを目安としますが、患者の状態によって異なります。
- PS(Pressure Support)
- 意味: 自発呼吸をサポートするために吸気時に補助される圧力。
- 目的: 患者の呼吸努力を助け、呼吸仕事量を減少させます。
- 設定の目安: 5〜15 cmH₂O程度。自発呼吸が可能な患者に対して適用されます。
- IPAP(Inspiratory Positive Airway Pressure)
- 意味: 吸気時の陽圧。非侵襲的換気モード(NIV、マスク換気)で使用される。
- 目的: 吸気の支援を行い、呼吸仕事量を軽減します。
- 設定の目安: 8〜25 cmH₂Oの範囲で設定されます。
- EPAP(Expiratory Positive Airway Pressure)
- 意味: 呼気時の陽圧。非侵襲的換気モード(NIV、マスク換気)で使用される。
- 目的: 気道を開いた状態に保ち、酸素化を改善します。
- 設定の目安: 4〜10 cmH₂Oの範囲で設定されます。
- PC(Pressure Control)
- 意味: 吸気圧を一定に保つ設定。
- 目的: 吸気中の圧力をコントロールし、過剰な肺の過膨張を防ぎます。
- 設定の目安: 設定は患者の状態によるが、目標換気量を達成するために調整されます。
圧力設定の調整と注意点
- 肺保護戦略: 圧力設定が高すぎるとバロトラウマ(圧損傷40cmH₂O程度)のリスクがあるため、肺保護を考慮した適切な設定が求められます。
- 換気量の調整: 圧力設定と患者の肺コンプライアンス(肺の柔軟性)を考慮しながら換気量を調整します。
- ガス交換の評価: 血液ガス分析を定期的に行い、酸素化や二酸化炭素の除去の状況を確認します。
- 患者の快適さ: 過度な圧力は患者の不快感や耐え難い感覚を引き起こす可能性があります。患者の自発呼吸との同期性を考慮した設定が重要です。
モニタリングと設定変更
- 圧力のモニタリング: 常に気道内圧をモニタリングし、異常があれば設定を調整します。
- コンプライアンスの変化: 肺の状態(コンプライアンス)が変化した場合、圧力設定も適宜見直す必要があります。
- アラームの確認: 圧力関連のアラーム(高圧アラームや低圧アラーム)が発生した場合、設定や回路の確認を行います。
圧力設定は患者の個々の状態に合わせて調整が必要で、慎重なモニタリングと評価が求められます。適切な設定により、効果的な呼吸サポートが可能になります。