
十二指腸潰瘍の治療は、主に内科的治療(薬物療法)が中心で、ほとんどの場合(約99%)で手術を避けられます。ピロリ菌感染が原因の場合、除菌療法が再発予防に有効です。治療期間は症状の重さや原因により異なりますが、標準的に6週間程度で80%以上が改善します。 以下に主な治療法をまとめます。
治療方法
1. 薬物療法(基本治療)
- 胃酸分泌抑制薬:プロトンポンプ阻害薬(PPI、例:オメプラゾール、ラベプラゾール)やH2ブロッカー(例:ファモチジン)。胃酸を抑えて潰瘍の治癒を促進。初回治療期間:4-8週間。
- 胃粘膜保護薬:スクラルファートやレバミピド。粘膜を修復・保護。
- ピロリ菌除菌療法:PPI + 2種類の抗生物質(アモキシシリン + クラリスロマイシン、またはメトロニダゾール)。1次療法の成功率は約80-90%。除菌判定は治療後4-8週間後に行い、失敗時は2次療法へ移行。
- NSAIDs使用時:原因薬の中止または代替(PPI併用)。
治療の目安:潰瘍が白い瘢痕(治癒跡)になるまで継続。1ヶ月半程度で治癒するケースが多いですが、再発防止のため1年間の維持療法(低用量PPI)が必要な場合あり。
2. 内視鏡治療(出血時)
- 出血が起きた場合、内視鏡で止血(クリップ留置、電気凝固)。即時対応で重症化を防ぐ。成功率高く、入院を短縮可能。
3. 外科手術(稀、1%未満)
- 穿孔(穴あき)や止血不能時:縫合術や部分切除。緊急手術が主。
生活指導(併用)
- 禁煙、節酒、刺激物(辛い食べ物、コーヒー)避け、規則正しい食事。ストレス管理。
入院期間
多くの場合、外来通院で治療可能(入院率約1%)。入院が必要なのは、出血・穿孔などの合併症時や高齢者・基礎疾患ありの場合です。
| 状況 | 入院の必要性 | 平均入院期間の目安 |
|---|---|---|
| 軽症(薬物療法のみ) | 不要(外来) | – |
| 出血・止血治療 | 必要(内視鏡後観察) | 3-7日 |
| 穿孔・手術 | 必要(緊急) | 2-3週間 |
| 重症例全体 | 稀 | 2-3週間 |
入院期間は病院の体制や患者状態により変動。DPC(診断群分類)制度により、標準化された短縮化が進んでいます。
診療報酬(医療費・保険適用)
日本では健康保険適用で、患者負担は3割(70歳以上は1-2割)。診療報酬は点数制(1点=10円)で算定され、2024年改定で一部調整あり。ピロリ菌除菌療法は2000年から保険適用(胃・十二指腸潰瘍の場合)。 目安費用(初診~治療、3割負担時)を以下に示します。実際は病院・検査内容で変動。
| 項目 | 診療報酬点数の目安 | 患者負担額の目安(3割) |
|---|---|---|
| 初診・問診 | 288点 | 約900円 |
| 内視鏡検査(胃カメラ) | 2,200-3,000点 | 約7,000-9,000円 |
| ピロリ菌検査(呼気/便) | 1,500-2,500点 | 約5,000-8,000円 |
| 除菌療法(1クール、薬代込) | 20,000-30,000点(薬代別) | 約6,000-9,000円 + 薬代3,000円 |
| 出血止血(内視鏡) | 5,000-10,000点 | 約15,000-30,000円 |
| 入院(1日、医療型) | 5,000-10,000点/日(DPC) | 約15,000-30,000円/日 |
| 総額(軽症外来治療) | – | 2-5万円(複数回) |
- DPC/PDPS制度:急性期病院で入院費を定額化。十二指腸潰瘍の場合、標準入院期間内で一括算定され、長期化で追加。
- 高額療養費制度:月額負担上限(所得による、8-25万円)あり。低所得者はさらに軽減。
- 注意:2025年現在、改定でPPIのジェネリック推進により薬代低減。詳細は医療機関や厚生労働省サイトで確認を。
重症時は早急受診を。個別ケースは医師相談を推奨。参考:日本消化器病学会ガイドライン、日本医療政策機構資料。

