大人の骨折と何が違う?3大特有骨折(若木・骨端線・バックル)のサインと診断のポイント

子供に特有の骨折について、「なぜ子供だけ?」という理由から、代表的な種類・診断・治療・注意点まで、わかりやすく詳しく解説します!


1. なぜ子供に「特有の骨折」が起きる?(3つの理由)

理由説明
① 骨が柔らかいコラーゲンが多く、曲がりやすい(大人の骨は硬くてバキッと折れる)
② 骨端線(成長軟骨板)がある骨の両端にある成長ゾーン。ここが弱点になる
③ 骨膜が厚い骨を包む膜が厚く、骨片を支えるので完全離断しにくい

イメージ:大人の骨=ガラス棒、子供の骨=若木の枝(折れても曲がる)


2. 子供に特有の骨折 3大タイプ

種類特徴好発部位年齢
① 若木骨折(グリーンスティック骨折)片側だけ折れて反対側が曲がる前腕(橈骨・尺骨)、鎖骨5〜10歳
② 骨端線離開(Salter-Harris分類)成長軟骨板が損傷指、足首、膝、手首10〜15歳(成長期)
③ バックル骨折(Torus骨折)骨がつぶれて波打つ遠位橈骨(手首近く)3〜8歳

3. ① 若木骨折(グリーンスティック骨折)特徴

  • 骨の片側が折れ、反対側が曲がる(木の枝を折るイメージ)
  • 骨膜が厚いため、骨片がバラバラにならない

好発部位

  • 橈骨遠位端(手首の骨折で最も多い)
  • 鎖骨

症状

  • 腫れ・痛みはあるが、変形が目立たないことも
  • 「折れてるのに動かせる」→ 見逃されやすい!

治療

程度治療
軽度(曲がり10°未満)ギプス固定 3〜4週
中等度(曲がり10〜20°)徒手整復(麻酔下でまっすぐに)+ギプス
重度(20°以上)まれにピン固定

注意:曲がったまま治ると変形治癒 → 成長で自然に矯正されることも


4. ② 骨端線離開(Salter-Harris分類)骨端線とは?

  • 骨の両端にある成長軟骨板
  • ここが損傷すると成長障害(短くなる、曲がる)のリスク!

Salter-Harris分類(5タイプ)

タイプ説明成長障害リスク
I骨端線のみ離開(5%未満)
II骨端線+骨幹端の骨片低〜中(10%)
III骨端線+関節面の骨折(30%)
IV骨端線+関節面+骨幹端最高(50%)
V骨端線がつぶれるほぼ100%(まれ)

I・II:90%が自然治癒
III・IV手術必須(関節面のズレを0.5mm以内に)

好発部位

  • 指(野球・バスケ)
  • 足首(サッカー)
  • 膝(ジャンプ)

治療

タイプ治療
I・IIギプス固定(ズレなければ)
III・IV観血的整復+ピン固定
V発見遅れで成長停止

レントゲンで「骨端線が広い」=要注意!


5. ③ バックル骨折(Torus骨折)特徴

  • 骨が圧迫されて波打つ(バックル=そりの意味)
  • 完全骨折ではない(亀裂のみ)

好発部位

  • 遠位橈骨(転倒で手をつく)

症状

  • 軽い腫れ・圧痛
  • 「折れてる?」と疑う程度

治療

  • ギプス固定 3週間(取り外し可能なものも)
  • ほぼ100%完治、成長障害なし

親が「大したことない」と放置 → まれに変形治癒


6. 診断のポイント(見逃さないために)

検査子供での特徴
レントゲン骨端線は正常でも広い → 反対側と比較!
超音波骨端線離開の早期診断に有用
MRI軟骨損傷の評価(III・IV型で必須)

「痛いけどレントゲン正常」=骨端線離開I型の可能性大!


7. 治療の基本(子供は治りが早い!)

項目子供の特徴
治癒期間大人の半分〜2/3(3〜6週)
整復骨が柔らかいので簡単に矯正可能
リモデリング成長で曲がりが自然に直る(特に10歳未満)

:20°曲がった橈骨も、2年でほぼまっすぐに!


8. 注意!「成長障害」のサイン

サイン意味
骨が短くなる骨端線が早く閉じる
骨が曲がる片側だけ成長が止まる
関節が変形III・IV型でズレが残る

→ 年1回のレントゲンで経過観察(特にIII・IV型)


9. 親・コーチが知っておくべき予防法

  1. 転倒対策
    → 手をつく練習(ローラーブレード、スキー)
  2. 適切な負荷
    → 成長期は週3日以上の休息
  3. 栄養
    • カルシウム:1000mg/日
    • ビタミンD:600IU/日
  4. 痛みは警告
    → 「我慢させる」→ 即休養+受診

まとめ:子供の骨折 3大タイプ

種類イメージ治療成長障害リスク
若木骨折枝が曲がって折れるギプス(整復)ほぼなし
骨端線離開成長ゾーンがズレるギプス〜手術I・II:低、III・IV:高
バックル骨折骨がつぶれるギプス3週なし