拘束性肺疾患に対する人工呼吸器設定は、肺が硬く、呼吸に必要な肺の拡張が制限されることに基づいて調整されます。代表的な疾患には肺線維症やサルコイドーシスなどがあり、これらは肺の弾性が低下し、肺の拡張が難しくなる病態です。
特徴と目標
- 特徴: 肺のコンプライアンス(柔軟性)が低下しているため、少量の空気を入れるだけで高い圧力がかかります。これにより、息を吸い込む能力が制限され、呼吸が浅くなります。
- 目標: 呼吸仕事量を軽減しながら、適切な酸素化と二酸化炭素の排出を行い、肺損傷を避けることが重要です。
設定項目
- 一回換気量(Tidal Volume: VT)
- 拘束性疾患では、通常の4〜6 ml/kgの理想体重を基準に低めの設定が推奨されます。
- 肺が硬いため、大きなVTは肺損傷(バロトラウマ)を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
- 呼吸回数(Respiratory Rate: RR)
- 呼吸回数はやや高めに設定されます(15〜20回/分)。
- これは、肺が拡張しにくいために小さなVTで呼吸を補うためです。
- 呼気終末陽圧(PEEP)
- 低めのPEEP設定(5〜8 cmH2O)が一般的です。
- PEEPは肺胞の虚脱を防ぐために役立ちますが、過度のPEEPは肺に過剰な負荷をかけるリスクがあります。
- 吸気時間/呼気時間比(I:E比)
- 拘束性肺疾患では、通常の1:2よりも1:1〜1:1.5のI比が推奨されます。
- 吸気時間を長めに設定し、固い肺をゆっくりと拡張させることがポイントです。
- 酸素濃度(FiO2)
- 酸素化不良が問題になることが多いため、FiO2は必要に応じて高めに設定します(50〜100%)。
- 低酸素血症を避けるため、適切なSpO2(通常92%以上)を目指します。
- 圧制御換気(PCV)または容量制御換気(VCV)
- **圧制御換気(PCV)**がよく使われます。圧力を一定にすることで、硬い肺に過剰な圧力がかかるのを防ぎます。
- **容量制御換気(VCV)**では、設定したVTに対して気道圧が上がりすぎるリスクがあるため、圧の監視が重要です。
- インスピレーション圧(PIP: Peak Inspiratory Pressure)
- 肺が硬く圧力が高くなる傾向があるため、設定圧力を30 cmH2O以下に抑えることが望ましいです。
具体的な設定例
- VT: 4〜6 ml/kg
- RR: 15〜20回/分
- PEEP: 5〜8 cmH2O
- I比: 1:1〜1:1.5
- FiO2: 50〜100%
- PIP: 30 cmH2O以下
合併症の予防
- 肺が硬いため、バロトラウマ(圧による肺損傷)のリスクが高く、気道圧の管理が非常に重要です。
- 酸素中毒のリスクもあるため、高濃度の酸素投与が長期間にわたる場合は、可能な限りFiO2を減らすように調整します。
まとめ
拘束性肺疾患における人工呼吸器の設定は、肺の硬さを考慮して、少ない換気量と適切な圧力制御を行い、酸素化を維持することがポイントです。また、バロトラウマや酸素中毒のリスクを避けるため、圧力や酸素濃度の監視が不可欠です。