混合型の呼吸疾患は、閉塞性肺疾患と拘束性肺疾患の両方の特徴を持つ状態です。この状態では、気道の閉塞により空気の流入が制限される一方で、肺組織の硬さや柔軟性の低下によって肺の拡張も困難になります。以下、それぞれの特徴と人工呼吸器の設定に関して詳しく説明します。
特徴
混合型肺疾患には、両方の病態が併存するため、以下のような複合的な問題が発生します。
- 閉塞性の特徴: 気道が狭くなることにより、呼気の排出が遅れ、肺の過膨張が起こります。典型的な疾患には慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などが含まれます。
- 拘束性の特徴: 肺の柔軟性が低下し、吸気時に肺が十分に拡張できないため、酸素の取り込みが制限されます。間質性肺炎や肺線維症などがこれに該当します。
診断と病態
- **スパイロメトリー(肺機能検査)**で、閉塞性病変と拘束性病変の両方が確認されます。
- FEV1/FVC比が低下(閉塞性)
- 肺活量の減少(拘束性)
- 典型的な例としては、COPDに伴う肺線維症や、喘息患者が繰り返す急性発作の後に拘束性の変化が加わるケースが挙げられます。
人工呼吸器設定
混合型疾患の患者に対する人工呼吸器設定は、閉塞性および拘束性の両方の要素に対応する必要があります。以下にそれぞれの設定ポイントを示します。
- 一回換気量(VT)
- 肺損傷を防ぐために、VTは通常、4〜6 ml/kgの範囲で低めに設定します。肺が硬い場合、大きなVTはバロトラウマ(圧による損傷)を引き起こすリスクがあるためです。
- 呼吸回数(RR)
- 中等度の呼吸回数(12〜18回/分)が一般的です。過剰な換気は二酸化炭素の貯留を悪化させるリスクがありますが、低すぎると酸素化が不十分になります。
- 呼気終末陽圧(PEEP)
- 肺の虚脱を防ぐため、中等度のPEEP(5〜10 cmH2O)を使用します。過度のPEEPは過膨張を助長する可能性があるため、慎重に設定します。
- I比(吸気時間と呼気時間の比率)
- 閉塞性の要素が強い場合、呼気を十分に行うためにI比を1:3〜1:4に設定し、呼気に時間をかけます。
- 一方で、拘束性の要素が強い場合は、1:1.5などのバランスが重要です。
- 酸素濃度(FiO2)
- 酸素化が問題となることが多く、**FiO2は必要に応じて50%〜100%**に設定されます。
- 酸素中毒を避けるため、酸素濃度を長期間高く保つ場合は注意が必要です。
- インスピレーション圧(PIP: Peak Inspiratory Pressure)
- 肺の硬さと閉塞性要素により圧力が高くなりがちです。通常は30 cmH2O以下に設定し、肺に過度な負担をかけないようにします。
合併症のリスクと対応
- 自動PEEP: 呼気が不完全に終わると、肺内に空気が貯留してしまい(エアトラッピング)、自動PEEPが発生し、さらなる過膨張や換気不良を引き起こします。このため、呼気時間の確保と気道圧の管理が重要です。
- バロトラウマと酸素中毒: 過度の換気圧やFiO2の設定により、これらのリスクが高まるため、慎重な圧力管理が必要です。
まとめ
混合型肺疾患における人工呼吸器の設定は、閉塞性および拘束性の両方の特徴に対応する複雑な管理が必要です。特に、換気量、呼吸回数、PEEPの設定には細心の注意が必要で、肺損傷や酸素中毒を防ぐためにバランスを取りながら設定します。