看護師は国家資格としての医療従事者であり、医師の指示のもとで幅広い医療行為を行うことが認められていますが、行って良い医療行為と行えない医療行為には明確な区分が存在します。日本では、看護師が行える医療行為について「医師法」および「保健師助産師看護師法」などの法律で規定されており、患者の安全を守るために範囲が限定されています。
看護師が行ってよい医療行為
看護師が医療行為を行う場合、多くの行為は医師の指示が必要ですが、状況によっては看護師の判断で行えるものもあります。以下は看護師が行える代表的な医療行為です。
- 与薬(薬の管理と投与):
- 経口薬や注射薬、外用薬の投与を医師の指示に従って行います。ただし、投与方法や投与量は厳格に医師の指示を守る必要があります。
- 採血・注射:
- 医師の指示がある場合、看護師は採血や静脈注射、皮下注射、筋肉注射を行うことができます。
- 点滴の管理:
- 点滴の針を刺す処置や点滴管理を行うことができますが、処置自体には医師の指示が必要です。
- バイタルサイン測定:
- 看護師の判断でバイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸数)を測定し、状態の把握を行います。これに基づき、医師に異常を報告するなどの対応も行います。
- 創傷の処置と管理:
- 傷の消毒やガーゼ交換などの創傷処置を行います。これも医師の指示のもとで行う場合が多いですが、簡易な処置であれば看護師が判断して実施することもあります。
- 吸引:
- 気管支や口腔内の吸引などの介助が可能で、医師の指示がなくても行える場合があります。
- 一部の救急措置:
- 心肺蘇生(CPR)などの緊急時の救命処置については看護師の判断で行うことができ、医師の指示が不要とされています。
看護師が行ってはいけない医療行為
医療行為の中でも、高度な技術や専門的な知識を必要とし、患者の生命に直接関わるものは看護師が行えません。以下は看護師が行えないとされている代表的な医療行為です。
- 診断と治療の決定:
- 診断や治療方針の決定は医師のみが行える行為であり、看護師は医師の指示に基づいて治療や処置を行いますが、独自の判断で診断を行うことはできません。
- 手術:
- 手術を行うことは医師にのみ許可されており、看護師は手術の介助や準備を行うのみで、執刀することはできません。
- 麻酔の投与:
- 麻酔の管理や投与は、専門知識と高度な技術が必要であり、麻酔科医や医師が行うべき行為です。看護師が麻酔を直接投与することは禁じられています。
- カテーテルの挿入(心臓カテーテル、中心静脈カテーテルなど):
- 中心静脈カテーテルや心臓カテーテルの挿入は高度な技術を要するため、医師のみが行える行為です。看護師は補助的な準備やサポートのみを担当します。
- 医師の診断を伴わない処方薬の指示や調整:
- 薬の処方や投与量の変更、種類の選択は医師が行うべき行為であり、看護師が独自に調整することは許可されていません。
- 美容医療行為(美容注射やボトックス、ヒアルロン酸注入など):
- 美容分野の医療行為も基本的に医師のみが行える行為であり、看護師は補助に限定されます。
特定行為研修を受けた看護師(特定行為研修を修了した看護師)
特定行為研修を受けた看護師は、医師の包括的指示のもと、特定の医療行為が認められています。この研修を修了した看護師は、以下のような医療行為が可能です。
- 気管挿管や静脈留置の確保
- 血糖測定や血液ガス分析の解釈と対応
- 輸液投与量の調整
まとめ
看護師は医師の補助としての医療行為が中心ですが、特定行為研修を受けた看護師は一部の医療行為が許可されるなど、活動範囲が広がっています。しかしながら、診断や治療方針の決定、手術など患者の生命に直接関わる行為は医師のみが行える行為として厳密に区分されています。