睡眠薬にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴や作用メカニズムが異なります。主な睡眠薬の種類とその特徴を以下にまとめます。
1. ベンゾジアゼピン系睡眠薬
代表的な薬
- ディアゼパム(Valium)
- ロラゼパム(Ativan)
- フルラゼパム(Dalmane)
- トリアゾラム(Halcion)
市販薬
- 日本ではベンゾジアゼピン系の睡眠薬は市販されていません。医師の処方が必要です。
後発品(ジェネリック医薬品)
- ジアゼパム(Diazepam)
- 商品名:セルシン、ホリゾンなど
- ロラゼパム(Lorazepam)
- 商品名:アタラックス、ワイパックスなど
- フルラゼパム(Flurazepam)
- 商品名:ダルメート
- トリアゾラム(Triazolam)
- 商品名:ハルシオン、トリアゾラム
特徴
- 作用メカニズム:GABA(γ-アミノ酪酸)受容体に結合し、神経の興奮を抑制することで鎮静・催眠効果を発揮します。
- 使用用途:短期的な不眠症治療に有効。
副作用
- 日中の眠気:鎮静効果が残り、日中の活動に影響を与えることがあります。
- 記憶障害:特に短期記憶が影響を受けることがあり、服用後に起こったことを忘れることがあります。
- 依存性と離脱症状:長期使用により依存性が生じ、薬を中止すると不眠や不安などの離脱症状が現れることがあります。
- 協調運動障害:筋肉の協調が取れなくなり、転倒や事故のリスクが高まります。
- 反跳性不眠:薬の効果が切れると、以前よりも強い不眠症状が現れることがあります。
2. 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
代表的な薬
- ゾルピデム(Ambien)
- ゾピクロン(Imovane)
- エスゾピクロン(Lunesta)
市販薬
- 日本では非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬も市販されていません。医師の処方が必要です。
後発品(ジェネリック医薬品)
- ゾルピデム(Zolpidem)
- 商品名:マイスリー、ゾルピデム
- ゾピクロン(Zopiclone)
- 商品名:アモバン、ゾピクロン
- エスゾピクロン(Eszopiclone)
- 商品名:ルネスタ、エスゾピクロン
特徴
- 作用メカニズム:ベンゾジアゼピン系と似た作用を持ちますが、異なる化学構造を持ち、より選択的にGABA受容体に作用します。
- 使用用途:短期的な不眠症治療に有効。
副作用
- 日中の眠気:ベンゾジアゼピン系と比較して少ないものの、眠気が残ることがあります。
- 記憶障害:特に高用量を服用した場合、記憶力が低下することがあります。
- 依存性:ベンゾジアゼピン系に比べて低いものの、長期使用により依存性が生じる可能性があります。
- 睡眠関連行動:睡眠中に歩行や運転、食事などを無意識に行うことが報告されています。
3. メラトニン受容体作動薬
代表的な薬
- ラメルテオン(Rozerem)
市販薬
- 日本では処方薬として販売されています。
- ラメルテオン(Ramelteon)
- 商品名:ロゼレム
特徴
- 作用メカニズム:メラトニン受容体に作用し、体内時計を調整することで自然な睡眠を促します。
- 使用用途:入眠困難に特に有効。
副作用
- 日中の眠気:メラトニンの自然な作用に近いため、副作用としては軽度の眠気が主です。
- 頭痛:一部の使用者に頭痛が現れることがあります。
- めまい:まれにめまいが生じることがあります。
- 悪夢:稀に夢の内容が鮮明になり、悪夢を見ることがあります。
4. オレキシン受容体拮抗薬
代表的な薬
- スボレキサント(Belsomra)
市販薬
- 日本では処方薬として販売されています。
- スボレキサント(Suvorexant)
- 商品名:ベルソムラ
特徴
- 作用メカニズム:覚醒を維持する神経ペプチドであるオレキシンの受容体を阻害し、自然な睡眠を促します。
- 使用用途:入眠困難や夜間覚醒に有効。
副作用
- 日中の眠気:覚醒を抑制する作用があるため、日中の眠気が生じることがあります。
- 頭痛:比較的一般的な副作用です。
- めまい:まれに報告されています。
- 奇異反応:不安感や興奮、錯乱などの反応が稀に報告されています。
5. 抗ヒスタミン薬
代表的な薬
- ジフェンヒドラミン(Benadryl)
- ドキシラミン(Unisom)
市販薬
- ジフェンヒドラミン(Diphenhydramine)
- 商品名:ドリエル(Drewell)、ベンザリン(Benylin)、ナイトール(Nytol)など
- ドキシラミン(Doxylamine)
- 商品名:アンソモニール(Ansomnin)
特徴
- 作用メカニズム:ヒスタミン受容体をブロックし、鎮静効果を発揮します。
- 使用用途:市販薬として一時的な不眠に用いられます。
副作用
- 日中の眠気:ヒスタミン受容体をブロックするため、翌日に眠気が残ることがあります。
- 口の乾き:抗コリン作用による口の乾きが一般的です。
- 便秘:抗コリン作用の一環として便秘が生じることがあります。
- 排尿困難:特に高齢者で、排尿が困難になることがあります。
- 視覚障害:一部の使用者において視覚がぼやけることがあります。
6. 抗うつ薬(低用量)
代表的な薬
- トラゾドン(Desyrel)
- ドキセピン(Silenor)
市販薬
- 抗うつ薬は通常、処方薬としてのみ利用可能です。
後発品(ジェネリック医薬品)
- トラゾドン(Trazodone)
- 商品名:デジレル、トラゾドン
- ドキセピン(Doxepin)
- 商品名:シルナート、ドキセピン
特徴
- 作用メカニズム:セロトニンやヒスタミン受容体に作用し、鎮静効果を発揮します。
- 使用用途:不眠症を伴ううつ病に有効。
副作用
- 日中の眠気:鎮静効果が強いため、日中の眠気が現れることがあります。
- 体重増加:一部の抗うつ薬は食欲を増進させ、体重増加を引き起こすことがあります。
- 性機能障害:性的欲求や機能に影響を及ぼすことがあります。
- 口の乾き:抗コリン作用によるものです。
- 便秘:抗コリン作用の一環として便秘が生じることがあります。
7. ハーブやサプリメント
代表的なもの
- バレリアン(Valerian root)
- カモミール
- メラトニンサプリメント
市販薬
- バレリアン(Valerian root)
- 商品名:バレリアンルート、ナイトバレリアンなど
- カモミール
- 商品名:カモミールティー、スリーピータイムティーなど
- メラトニンサプリメント
- 商品名:メラトニン、ナトロールメラトニンなど
特徴
- 作用メカニズム:自然由来の成分が神経の鎮静を促進します。
- 使用用途:軽度の不眠に用いられます。
副作用
- バレリアン:軽度の頭痛、胃の不調、めまいが報告されています。長期使用により依存性が懸念されることもあります。
- カモミール:一般的には安全ですが、アレルギー反応や胃の不調が稀に報告されています。
- メラトニン:日中の眠気、頭痛、めまい、悪夢が稀に報告されています。
結論
睡眠薬には多様な種類があり、それぞれの作用メカニズムや効果、副作用があります。どの薬を選ぶかは、個々の不眠症の原因や症状、健康状態に応じて医師と相談して決定することが重要です。市販薬として利用できるのは主に抗ヒスタミン薬やハーブ、サプリメントであり、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は医師の処方が必要です。また、メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬も処方薬として利用可能です。また、睡眠薬は一時的な対処療法であり、根本的な不眠の原因を探り、生活習慣の改善や心理療法なども併用することが推奨されます。