社会保険と国民健康保険は、日本の公的医療保険制度の一部であり、医療費負担を軽減するための仕組みですが、加入対象や運営方法、保険料の計算方法などが異なります。以下にその比較をまとめました。
1. 加入対象者
- 社会保険(健康保険):
- 主に会社員、公務員、法人の役員が対象です。
- 会社などの組織に雇用されている場合、その会社が保険料の半分を負担し、従業員の給与から残りが天引きされます。
- 会社員の扶養家族(配偶者、子どもなど)も被扶養者として保険の対象になります。
- 国民健康保険:
- 自営業者、農業従事者、フリーランス、学生、無職の人、退職後に社会保険から外れた人などが対象です。
- 扶養家族という概念はなく、世帯単位で加入し、保険料も世帯ごとに計算されます。
2. 運営者
- 社会保険(健康保険):
- 運営は企業や公的団体、政府が行います。
- 健康保険は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」や企業が独自に運営する「組合健保」などに分かれます。
- 国民健康保険:
- 各市町村が運営しています。
- 一部の自治体では、国民健康保険組合が運営を行っています(特定の職業団体に所属する人々が対象)。
3. 保険料の計算方法
- 社会保険(健康保険):
- 保険料は、基本的に給与や賞与に基づいて計算されます。
- 会社が保険料の半分を負担し、残りが給与から天引きされます。
- 健康保険料には、介護保険料(40歳以上の場合)が含まれることもあります。
- 国民健康保険:
- 保険料は、前年の所得、世帯の人数、資産(固定資産税)などを基に市町村が決定します。
- 保険料は世帯ごとに支払う必要があり、会社が負担する部分はありません。
- 収入が多いほど保険料が高くなります。
4. 保険証
- 社会保険(健康保険):
- 勤務先から健康保険証が発行されます。被保険者とその扶養家族分が発行されます。
- 国民健康保険:
- 市町村から世帯ごとに国民健康保険証が発行されます。世帯の全員が記載されます。
5. 給付内容
- 社会保険(健康保険):
- 病気やけがの際の医療費給付(通常、自己負担は3割)に加えて、出産育児一時金や傷病手当金などが支給されます。
- 傷病手当金は、病気やけがで仕事を休んだ場合に、給与の一部が補填される制度です。
- 国民健康保険:
- 基本的な医療費の給付(自己負担は3割)が中心です。
- 出産育児一時金や葬祭費が給付されることもありますが、傷病手当金はありません。
6. 保険料の負担
- 社会保険(健康保険):
- 保険料の半分は会社が負担するため、個人の負担は軽減されます。
- 国民健康保険:
- 保険料は全額自己負担です。そのため、社会保険と比べると、収入が多い場合は負担が大きくなる可能性があります。
7. 退職後の対応
- 社会保険(健康保険):
- 退職後も希望すれば、最大2年間、任意継続被保険者として社会保険に加入し続けることができます(ただし、保険料は全額自己負担)。
- 任意継続しない場合は、国民健康保険に切り替える必要があります。
- 国民健康保険:
- 定年退職や会社を辞めた後は、基本的に国民健康保険に加入することになります。
まとめ
- 社会保険は、企業に勤める人が加入し、企業が保険料を一部負担することで、個人の負担が軽減される。傷病手当金などの給付が充実している。
- 国民健康保険は、フリーランスや自営業者などが加入し、保険料は全額自己負担で、前年の所得などに応じて計算される。傷病手当金はなく、給付内容も社会保険に比べてシンプルです。
どちらの保険に加入するかは、雇用形態や生活状況により異なりますが、どちらも日本の医療制度の中で重要な役割を果たしています。