突発性難聴の特徴、原因、診断、治療法、および予後について

突発性難聴は、突然の原因不明の聴力低下を特徴とする内耳の疾患です。通常、片耳に生じ、早急な診断と治療が求められます。以下に、突発性難聴の特徴、原因、診断、治療法、および予後について説明します。

特徴

  • 発症の急速性: 数時間から数日以内に、突然片耳の聴力が低下します。多くの場合、朝起きた時に気づくことが多いです。
  • 片側性: ほとんどが片耳に発症し、両耳に生じることは稀です。
  • 耳鳴りや耳閉感: 聴力低下に伴い、耳鳴りや耳の詰まった感じ(耳閉感)を伴うことが多いです。
  • めまい: 患者の30〜40%にめまいを伴うことがあり、場合によっては強い回転性のめまいが生じることもあります。

原因

突発性難聴の明確な原因は不明ですが、いくつかの仮説があります。

  1. ウイルス感染説: 感冒などのウイルス感染がきっかけとなり、内耳の神経や血管に炎症を引き起こすと考えられています。
  2. 循環障害説: 内耳の血流が急に低下し、酸素や栄養の不足により内耳の機能が障害されるとする説です。
  3. 自己免疫説: 免疫系が誤って内耳の組織を攻撃し、聴力低下を引き起こす可能性があります。
  4. ストレスや疲労: 心身のストレスや疲労が引き金となり、発症することも考えられています。

診断

  • 聴力検査: 突発性難聴の診断には、純音聴力検査が重要です。25 dB以上の聴力低下が3つ以上の連続した周波数で認められることが診断基準とされています。
  • 語音明瞭度検査: 聴力低下の程度を測定し、聴力回復の経過を追います。
  • MRI: 聴神経腫瘍などの他の病因を除外するために、頭部のMRI検査を行うことがあります。

治療法

治療は早期に開始することが重要です。治療の開始が遅れると、聴力の回復が困難になることがあります。

  1. ステロイド療法:
    • ステロイドの内服または点滴治療が標準的です。内耳の炎症を抑える効果があります。
    • 難治性のケースでは、鼓室内(中耳内)ステロイド注入が行われることもあります。
  2. 高気圧酸素療法:
    • 内耳の酸素供給を増やし、組織の回復を促進します。特に治療開始が早期の場合に効果的とされています。
  3. 循環改善薬:
    • 血流を改善する薬剤(抗血小板薬や血管拡張薬)を用いて、内耳の血流を増加させる治療が行われます。
  4. ビタミン剤:
    • ビタミンB12など、神経の修復や保護に効果があるとされるサプリメントが併用されることもあります。
  5. 安静と生活指導:
    • ストレスや疲労を避け、安静を保つことが推奨されます。過度の労働や睡眠不足を避けることが重要です。

予後

  • 治療の効果は発症からどれだけ早く開始されたかに大きく依存します。発症後2週間以内に治療を開始することが推奨されます。
  • 患者の約3分の1は完全回復、3分の1は部分的回復、残りの3分の1は聴力の回復がほとんど見られないとされています。
  • 年齢が若い、初期の聴力低下が軽度、めまいを伴わない場合、予後は比較的良好です。

突発性難聴の発症後の注意点

  • 発症後はストレスや過労を避け、健康管理に努めることが重要です。
  • 聴力の回復具合によっては、補聴器の使用や生活環境の調整が必要になることがあります。
  • 再発することは稀ですが、聴力が低下した場合は再度専門医の診察を受けることが推奨されます。

突発性難聴は、早期発見・早期治療が非常に重要な疾患です。異変を感じたら、速やかに耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

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