咳や発熱といった症状が出たとき、それが単なる風邪なのか、治療が必要な肺炎なのかを正確に見極めるには、迅速かつ的確な検査が不可欠です。特に肺炎は重症化リスクが高いため、診断の遅れは命に関わります。
この記事では、肺炎診断に必須となる**「3本柱」(炎症の証明、肺の異常確認、原因菌特定)**を中心に、検査の流れを詳しく解説します。
- 血液検査でわかる炎症の強さ(CRP)と原因菌の推定(プロカルシトニン)
- **画像検査(胸部X線・CT)**で肺炎を確定診断する「白い影」とは何か
- 喀痰検査で原因菌を特定し、治療薬(抗菌薬)を決める方法
- CURB-65スコアなど、入院やICUの必要性を判断する重症度評価
「いつもと違う」と感じた時に適切な検査を受けるため、この知識を活用してください。高齢者の診断で見逃されやすいポイントや、COVID-19疑い時の特殊な検査についても触れています。
1. 問診・身体診察(最初に必ず行う)
| 内容 | 目的 |
|---|
| 咳・痰・発熱・息切れの期間・重さ | 風邪との区別 |
| 胸の音を聴く(聴診) | 肺に「ラ音(ラ音)」や「呼吸音減弱」があるか |
| 酸素飽和度(SpO2)測定 | 90%未満なら重症のサイン |
2. 血液検査(炎症の強さ・原因推定)
| 検査項目 | 正常値 | 肺炎での変化 | 意味 |
|---|
| 白血球(WBC) | 4,000〜10,000 | ↑(細菌性) ↓(ウイルス性) | 細菌感染の目安 |
| CRP | <0.3 mg/dL | ↑↑(数値が高いほど重症) | 炎症の強さ |
| プロカルシトニン(PCT) | <0.1 ng/mL | ↑(細菌性で特に高い) | 細菌性かウイルス性かの鑑別 |
| LDH・D-dimer | – | ↑ | 重症度・血栓リスク評価 |
3. 画像検査(肺炎の「確定診断」に必須!)
| 検査 | 特徴 | 所見例 |
|---|
| 胸部X線 | 第一選択 安価・迅速 | – 肺に「白い影(浸潤影)」 – 片側だけor両側 |
| 胸部CT | 詳細な評価 重症例・原因不明時 | – すりガラス影(ウイルス性) – 膿瘍・空洞(重症細菌性) |
| 肺超音波 | ベッドサイドで可能 放射線被曝なし | 肺表面の「Bライン」増加 |
胸部X線で「影」があれば → ほぼ肺炎確定!
4. 喀痰・気道検査(原因菌を特定)
| 検査 | 目的 | 備考 |
|---|
| 喀痰グラム染色 | 細菌の形・数を即日確認 | 「肺炎球菌らしい双球菌」など |
| 喀痰培養 | 原因菌を特定+薬剤感受性 | 結果は3〜5日後 |
| 迅速抗原検査 | 肺炎球菌・レジオネラを15分で検出 | 尿で検査可能 |
| PCR検査 | ウイルス・非定型菌(マイコプラズマなど) | COVID-19やインフルも同時検査可 |
5. 重症度評価スコア(入院・ICU判断に使用)
| スコア | 評価項目 | 死亡リスク予測 |
|---|
| CURB-65 | 意識障害・尿素窒素・呼吸数・血圧・65歳以上 | 0点:外来 2点以上:入院 3点以上:ICU検討 |
| PSI(Pneumonia Severity Index) | 年齢・基礎疾患・検査値など | クラスI〜III:外来 IV〜V:入院 |
検査の流れ(一般的な例)
1. 外来受診
↓
2. 問診+聴診+SpO2
↓
3. 胸部X線+血液検査(CRP・WBC)
↓
├─ 軽症 → 外来で抗菌薬
└─ 中等症以上 → 喀痰検査+入院
↓
CT・培養・PCR(必要時)
特殊な検査(限定的に使用)
| 検査 | 適応 |
|---|
| 気管支鏡検査 | 原因不明・免疫不全・血痰 |
| 胸水穿刺 | 胸水が溜まっている場合(膿胸の評価) |
| バイオマーカー(sTREM-1など) | 研究段階・重症例 |
まとめ:肺炎診断の「3本柱」
| 柱 | 検査 |
|---|
| 1. 炎症の証明 | 血液検査(CRP↑) |
| 2. 肺の異常確認 | 胸部X線 or CT |
| 3. 原因菌特定 | 喀痰培養・迅速検査 |
「胸部X線+CRP」でほぼ診断可能!
原因特定は「治療薬選択」に直結します。
注意ポイント
- 高齢者:症状が弱く、X線でも影がはっきりしないことも → CT推奨
- COVID-19疑い:PCR+CT(すりガラス影)が重要
- 誤嚥性肺炎:嚥下機能評価(VE検査)も併用