[脳出血の種類]主要5タイプを徹底解説!原因、症状、重症度の違いと緊急サイン

脳出血は、脳内の血管が破れて出血し、脳細胞を破壊したり圧迫したりする重篤な病態です。その発生場所によって、原因、現れる症状、重症度、そして治療方針が大きく異なります。日本での頻度が最も高い「被殻出血」から、最も致死率が高い「橋出血」まで、脳出血は主に5つのタイプに分類されます。

脳出血の主な種類(発生場所別)と詳細

種類頻度(日本)主な原因・危険因子典型的な症状重症度・予後特徴的な画像所見(CT/MRI)
被殻出血約40〜50%高血圧(90%以上)、血管の老化片麻痺(対側)、感覚障害、失語(利き手側の場合)比較的予後良好(死亡率10〜20%)被殻〜内包に血腫、時に脳室に破る
視床出血約15〜25%高血圧がほとんど感覚障害(対側全部位)、眼の動き異常、意識障害重症になりやすい(死亡率20〜40%)視床に血腫、脳室穿破で水頭症になりやすい
皮質下出血(大脳白質)約10〜15%高齢者:脳アミロイド血管症 若年者:AVM(脳動静脈奇形)頭痛が強い、けいれん、意識障害、局所症状は場所による出血量次第(大きいと危険)脳の表面近く(葉間出血)に血腫
小脳出血約5〜10%高血圧、血管奇形激しい頭痛・嘔吐、めまい、歩行不能、ろれつが回らない急速に悪化しやすく、緊急手術が必要な場合多小脳半球に血腫、第四脳室圧迫→水頭症
橋出血(脳幹出血)約5〜10%高血圧がほとんど四肢麻痺、瞳孔異常、意識障害〜昏睡、呼吸停止の危険死亡率40〜70%と非常に高い橋(脳幹中央)に血腫
クモ膜下出血(厳密には脳実質外出血)※脳出血とは別枠扱いが多い脳動脈瘤破裂(80〜85%)、血管奇形など「ハンマーで叩かれたような」激しい頭痛、意識消失再出血リスクが高く死亡率30〜50%CTでクモ膜下腔に高吸収域(血)

各種類のポイントを詳しく解説

  1. 被殻出血(一番多い)
    • 高血圧で長年ダメージを受けた「レンズ核線条体動脈」という細い血管が破れる 
    • 典型は「対側片麻痺+対側感覚障害+眼が患側に寄る」 
    • 血腫が30mLを超えると予後が悪化しやすい
  2. 視床出血
    • 感覚の通り道である視床が壊れるので「全部位の感覚障害」が特徴 
    • 「視床痛」(後遺症で非常に強い痛み)が起こることがある 
    • 血が脳室に入ると急性水頭症を起こし、急に意識が悪くなる
  3. 皮質下出血(葉間出血)
    • 高齢者では「脳アミロイド血管症」(アミロイドが血管に溜まる)が原因で多発しやすい 
    • 若い人で突然起こる場合は「血管奇形」の可能性が高い(MRIで調べる)
  4. 小脳出血
    • 「6時間ルール」が重要!
      → 発症6時間以内に血腫が大きくなってきたら緊急手術(後頭蓋窩減圧術)が必要 
    • 小脳は狭いスペースなので、血腫で脳幹が圧迫されると急に呼吸停止する
  5. 橋出血(脳幹出血)
    • 「ピンポイント麻痺」や「閉じ込め症候群(locked-in syndrome)」になることも 
    • 生存しても重度後遺症が残ることがほとんど

覚えておくと便利な目安

  • 高血圧が原因 → 被殻・視床・橋・小脳に多い 
  • 若い人で突然 → 血管奇形や動脈瘤を疑う 
  • 高齢者で皮質下に複数出血 → アミロイド血管症を疑う 
  • 「今までに経験したことない頭痛」+嘔吐 → まずクモ膜下出血を疑う