臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修について

臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修は、医療技術の進展や臨床工学技士の役割拡大に対応するため、臨床工学技士に新たな業務が認められた際に必要とされる研修です。この研修の目的は、臨床工学技士が新たに加わる業務を適切に実施するために必要な技術・知識・技能を習得し、医療現場における安全性や治療の質を確保することです。

研修の背景

臨床工学技士は、これまで医療機器の操作・管理に従事してきましたが、業務範囲が拡大され、例えば侵襲的な医療処置(動脈穿刺や体外循環装置の操作など)も含まれるようになりました。このような業務追加により、医療行為の質や安全性を確保するために、厚生労働省は臨床工学技士に対する専門的な研修を指定しています。

厚生労働大臣指定研修の内容

厚生労働大臣が指定する研修には、以下の内容が含まれます:

  1. 基礎知識の習得
    • 解剖学や生理学、病態生理学といった基本的な医療知識を学び、特に追加される業務に関連する知識を習得します。
  2. 医療機器の操作方法
    • 特定の業務に関する医療機器(例えば、動脈穿刺に関連する血液ガス測定機器や輸液ポンプなど)の操作方法を、実習を通して学びます。
  3. 医療安全管理
    • 手技中の患者安全確保や、感染防止対策、緊急時の対応方法など、安全管理の知識と技術を習得します。
    • 特に患者の侵襲を伴う手技では、術中および術後の合併症リスク管理も含まれます。
  4. 実技訓練
    • 実践的な場面を想定し、シミュレーションや実習を通じて技術を習得します。例えば、動脈穿刺や体外循環装置の操作に関して、指導者のもとで繰り返し練習することにより、スムーズで安全な手技の実施ができるよう訓練します。

研修修了の認定

研修を修了すると、研修機関から修了証が発行されます。これにより、臨床工学技士は新たな業務範囲内での活動が認められ、医療現場で必要な業務を担うことができます。この研修修了は、臨床工学技士の専門性を高め、医療機関でのチーム医療の一環として重要な役割を果たすために不可欠とされています。

主な対象業務

厚生労働大臣指定研修の主な対象業務は、次のような侵襲的医療行為や生命維持管理に直結する業務です。

1. 動脈ラインの確保や動脈穿刺

動脈ラインの確保や動脈穿刺は、患者の動脈から直接血液を採取し、血液ガス分析や循環動態モニタリングに用います。臨床工学技士がこの業務を担うことで、患者の血圧・酸素レベルをリアルタイムで測定し、急変リスクのある患者の状態を即時に把握することができます。

  • 適応シーン:ICU(集中治療室)や救命救急センターなど、急性期医療の場で重要な役割を果たします。
  • 必要技術:動脈の正確な解剖知識と高い穿刺技術が求められ、感染管理の徹底も不可欠です。

2. 体外循環(ECMOなど)の管理

体外循環装置、特にECMO(体外式膜型人工肺)は、心肺機能が低下した患者に対して、血液を体外に出し酸素を供給しながら二酸化炭素を除去する装置です。重篤な心肺機能不全に対応するための高度な医療機器であり、装置の操作やモニタリング、装置のトラブルシューティングを担います。

  • 適応シーン:心停止や重度の呼吸不全患者、また心臓外科手術後のサポートに使用されます。
  • 必要技術:血液ガス管理や回路の管理、装置のトラブルに即応できる技能が必要です。特にECMOはリスクが高いため、臨床工学技士には高度な専門知識と慎重な操作が求められます。

3. 血液浄化装置の操作

血液浄化装置は、腎不全患者や毒素除去が必要な患者に用いる透析装置や血液ろ過装置です。臨床工学技士が操作を担当し、血液の透析やろ過により電解質や毒素のバランスを整えます。

  • 適応シーン:慢性腎不全や急性腎障害の患者、薬物中毒による毒素除去が必要な場面。
  • 必要技術:透析の管理やカテーテルケア、抗凝固管理、患者の血液データを基にしたリアルタイムの装置調整が求められます。また、感染防止対策も重要です。

4. その他の高侵襲医療機器の管理

これらに加え、臨床工学技士は人工呼吸器、ペースメーカーなど生命維持装置の管理やトラブル対応も行います。これらの機器を通じて、患者の呼吸や循環を安定させるため、医療機器の設定変更や異常が発生した場合の迅速な対応も含まれます。

業務範囲拡大による臨床工学技士の貢献

こうした業務を通じて、臨床工学技士は医療の安全性や質の向上に寄与し、医療チームの一員として重要な役割を果たします。特に侵襲的医療行為や高度医療機器の管理は、医療従事者全体の作業負担軽減にも寄与するため、臨床工学技士の専門性向上がますます求められています。

このような指定研修により、臨床工学技士は患者に対する高度な医療を提供する能力が強化され、業務の質の向上とともに、安全な医療提供に貢献することが求められます。

公式HPより

臨床工学技士の業務範囲追加に伴う厚生労働大臣指定による研修 | 公益社団法人 日本臨床工学技士会
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