臨床検査技師が行える医療行為と行えない医療行為について

臨床検査技師は、患者の健康状態を把握するための検査を行う医療職で、主に血液や尿などの検体検査や、心電図、脳波といった生理学的検査を担当します。臨床検査技師法によって業務範囲が定められており、検査やデータ管理が中心で、診断や治療行為そのものには制限があります。以下に、臨床検査技師が行える業務と行えない業務について詳しく説明します。

臨床検査技師が行える業務

臨床検査技師の主な業務は、医師の診断をサポートするために行う各種検査です。

  1. 検体検査(血液、尿、便など)
    • 血液検査、尿検査、便検査などで、さまざまな分析機器を使用して成分や異常を検査します。血糖値や腎機能、肝機能、免疫反応、ホルモン濃度、感染症の有無などを検査し、患者の体内状態を明らかにします。
  2. 微生物検査
    • 感染症の原因となるウイルスや細菌などの病原体を検出するための培養検査や抗原・抗体検査などを行います。新型コロナウイルスのPCR検査やインフルエンザ検査も臨床検査技師が担当することがあります。
  3. 生理機能検査
    • 心電図、脳波、肺機能、超音波(エコー)など、体内の生理的な活動を測定する検査を行います。心臓の電気活動や脳の波動、呼吸能力などを調べることで、疾患や機能障害の早期発見に役立ちます。
  4. 病理検査補助
    • 臨床検査技師は病理医の指導のもと、細胞診や組織診を行うことができます。採取された細胞や組織の標本作成、染色、観察などを担当し、がんなどの病変を調べるための準備を行います。
  5. 輸血検査
    • 輸血を必要とする患者に対し、血液型の適合検査や感染症の有無を確認する輸血検査を行います。輸血の際の安全性を確認するためのクロスマッチ検査なども担当します。
  6. 遺伝子検査
    • 遺伝子診断を行うために、DNAやRNAの解析を行う遺伝子検査を実施します。特定の遺伝的疾患やがんのリスクを評価するための検査で、技術が進んでおり、専門的な知識が必要です。
  7. 検査データの管理と提供
    • 検査結果を整理し、データとして医師や看護師に提供することで、診断や治療の参考情報として役立てます。検査機器の保守や精度管理も行い、常に正確なデータを提供できるようにしています。

臨床検査技師が行えない医療行為

臨床検査技師は、検査の専門家であるため、診断や治療行為には関与できません。以下は、臨床検査技師が行えない業務です。

  1. 診断および治療の判断
    • 検査結果の分析や評価に基づいて診断を行うのは医師の役割です。臨床検査技師はデータの収集と提供を行いますが、検査結果に対して病名を特定したり、治療の決定を行うことはできません。
  2. 薬剤の投与や処方
    • 臨床検査技師は薬剤の投与や処方、または造影剤の投与を行うことができません。薬剤に関する業務は医師や看護師の役割であり、検査の際に薬剤が必要となる場合も、投与に関与することはできません。
  3. 外科的処置
    • 採血や注射、カテーテル挿入などの外科的処置は臨床検査技師の業務には含まれません。たとえば病理検査に用いる組織の採取も医師が行います。臨床検査技師は検査そのものや標本の作成のみが担当範囲です。
  4. 医療機器の操作(放射線機器など)
    • X線撮影やMRI、CTスキャンなど、放射線を使用した医療機器の操作は放射線技師が担当し、臨床検査技師はこれらの機器を操作できません。画像診断は、あくまで放射線技師や医師が行う業務です。
  5. 患者への直接的なリハビリテーションやカウンセリング
    • リハビリや心理的なサポート、健康相談なども臨床検査技師の業務外です。こうした業務は、理学療法士や心理士が行います。
  6. 採血(特定条件下を除く)
    • 基本的には、採血は医師や看護師が行いますが、臨床検査技師が採血を行うことが認められるのは、施設で定められた範囲内であり、医師の指示のもとで行われる場合に限られます。法律に基づいた一定の条件が必要です。

特定の資格や研修を受けた場合の追加業務

臨床検査技師が特定の研修を受けたり、資格を取得することで、より専門的な検査が可能になるケースもあります。

  • 超音波検査士資格:超音波(エコー)検査の専門資格を取得することで、さらに高度なエコー検査を行うことが可能になります。
  • 細胞検査士資格:細胞診断の専門資格を取得し、がんや前がん病変の早期発見に関わる細胞検査に従事することが可能です。
  • 遺伝子解析関連資格:遺伝子検査の高度な技術や知識を持つ臨床検査技師として、がん遺伝子の解析や遺伝子カウンセリングのサポートも行えます。

まとめ

臨床検査技師は、医療の現場で検査やデータ分析を通じて医師の診断や治療をサポートする重要な役割を担っています。血液検査や心電図、遺伝子検査など、検査結果から患者の健康状態を明らかにし、正確なデータを医療チームに提供します。ただし、診断や治療といった医療行為そのものは行えませんが、幅広い検査知識で医療チームに貢献しています。