閉塞性肺疾患に対する人工呼吸器の設定は、適切なガス交換を維持しながら、患者に対する過度な負荷を避けることが重要です。主に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支喘息などの病態において、特定の換気設定が適用されます。
特徴と目標
- 特徴: 閉塞性肺疾患では、呼気流出の障害があるため、息を吐くのに時間がかかり、気道が狭くなっているために、空気が肺に閉じ込められやすくなります(気流制限)。
- 目標: 肺の過膨張(auto-PEEP)を避けながら、十分な酸素供給と二酸化炭素の排出を維持することが目的です。
設定項目
- 一回換気量(Tidal Volume: VT)
- 一般的には6〜8 ml/kgの理想体重を基準に設定されます。
- VTが大きすぎると、過膨張を引き起こし、肺に過度の負担をかけるため注意が必要です。
- 呼吸回数(Respiratory Rate: RR)
- 呼吸回数は**低め(10〜15回/分)**に設定します。
- 呼気時間を長めに設定し、患者が息を吐き切る時間を確保することが重要です。
- 呼気終末陽圧(PEEP)
- 適度なPEEPが設定されますが、過度なPEEPは肺の過膨張を引き起こす可能性があるため、慎重に設定します。
- Auto-PEEP(患者の呼気が十分にできずに気道に残った圧力)がある場合、設定PEEPは低めにしますが、完全にゼロにはしないようにします。
- 吸気時間/呼気時間比(I:E比)
- 呼気時間を長く(I:E比は1:3〜1:4)設定し、気道が閉塞している患者が十分に息を吐き切れるようにします。
- 呼気時間が短すぎると、空気が肺に閉じ込められ、過膨張や呼吸困難が悪化する可能性があります。
- 酸素濃度(FiO2)
- 酸素濃度は必要最小限に設定し、低酸素血症を防ぎます。
- 通常は50〜60%の範囲で開始し、SpO2(酸素飽和度)に応じて調整します。
- 圧制御換気(PCV)または容量制御換気(VCV)
- **圧制御換気(PCV)**は、圧力制御により過膨張を避けやすいですが、VTの変動に注意する必要があります。
- **容量制御換気(VCV)**では、VTが一定に保たれますが、気道圧が高くなりすぎないように監視します。
- 呼気ガス分析とCO2管理
- 二酸化炭素の蓄積(高炭酸ガス血症)を避けるために、**エンドタイトルCO2(EtCO2)**や動脈血ガス分析を監視します。
具体的な設定例
- VT: 6〜8 ml/kg
- RR: 10〜15回/分
- PEEP: 3〜5 cmH2O(auto-PEEPを考慮)
- I比: 1:3〜1:4
- FiO2: 必要最低限(50〜60%)
- PCVモード: 低圧に設定し、圧力の上昇を防ぐ。
合併症の予防
- Auto-PEEPの発生を避けるために、呼気時間を十分に確保し、呼吸回数やVTを適切に調整します。
- 肺の過膨張を防ぐため、適切な圧力設定が不可欠です。
閉塞性肺疾患に対する人工呼吸器の管理は、病態の進行状況や患者の呼吸努力に応じて柔軟に対応する必要があります。