閉塞性肺疾患(COPD:慢性閉塞性肺疾患や、喘息など)は、気道が狭くなることで呼吸が困難になる病気です。これらの疾患は特に呼気に影響を与え、気道閉塞により空気を十分に排出できなくなります。
1. 特徴
閉塞性肺疾患では、気道が狭くなり、呼吸が制限されます。この狭窄は、炎症や気道周囲の組織の損傷、過剰な粘液の産生などが原因となります。主な特徴は以下の通りです:
- 呼吸困難:特に運動時や夜間、早朝に増加する。
- 慢性の咳:特に痰が多い咳。
- 喀痰の増加:気道に溜まる分泌物が増加。
- 呼吸音の変化:喘鳴(ゼーゼー音)や長い呼気。
2. 代表的な疾患
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD):慢性気管支炎と肺気腫が含まれます。喫煙が主な原因です。
- 喘息:気道が一時的に狭くなり、アレルギーや環境刺激物が引き金になります。
- 気管支拡張症:気道が拡張してしまうことで、慢性的な咳や感染症を引き起こします。
3. 治療法
治療は疾患の進行度に応じて段階的に進められますが、主に以下の方法が用いられます:
薬物療法
- 気管支拡張薬:β2刺激薬や抗コリン薬が使用され、気道を広げます。吸入器が主に用いられます。
- ステロイド:気道の炎症を抑えるために、吸入ステロイド薬が使用されます。重症例では経口ステロイドが使用されることもあります。
- 抗生物質:感染が疑われる場合、急性増悪時に用いられることがあります。
呼吸リハビリテーション
呼吸を補助する運動療法やトレーニングが行われ、患者の生活の質を向上させるための治療法です。
酸素療法
酸素飽和度が低い患者に対して、長期酸素療法が必要となることがあります。これは血中の酸素濃度を適正範囲に保つために重要です。
手術
- 肺減量手術:肺の一部を除去して、肺全体の働きを改善します。COPDの重症患者に行われることがあります。
- 肺移植:非常に重篤な場合に考慮されます。
4. 人工呼吸器の設定
閉塞性肺疾患患者に人工呼吸器を使用する場合、特別な配慮が必要です。特にCOPD患者では、空気の捕捉(air trapping) や過膨張を避けるため、設定に注意が必要です。
主な設定項目
- 低い呼吸回数(RR):呼吸回数を低めに設定することで、患者が自発呼吸をしやすくし、十分な呼気時間を確保します。
- 高い吸気流速(Flow):吸気を短時間で行うため、呼気時間を長く取ります。
- PEEP(呼気終末陽圧):低めに設定するか、過度に高く設定しないよう注意します。通常、5cmH2O程度で設定されます。
- 一回換気量(VT):過度な過膨張を防ぐために、適切な量(通常6-8ml/kg)が設定されます。
人工呼吸モード
- SIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation):自発呼吸をサポートし、強制換気と自発換気のバランスを取ります。
- PSV(Pressure Support Ventilation):自発呼吸に応じて圧力をサポートし、呼吸努力を軽減します。
注意点
閉塞性疾患の患者では、酸素過剰投与や呼吸回数の設定ミスが、高炭酸ガス血症(CO2ナルコーシス)を引き起こすリスクがあるため、血中の酸素と二酸化炭素のバランスを慎重にモニタリングします。
閉塞性肺疾患の治療は、病状の進行や個々の患者の状態に応じて柔軟にアプローチが必要です。人工呼吸器の設定も病態に合わせて調整し、適切な呼吸をサポートすることが重要です。