離職率の目安や高い企業、低い企業について

離職率は、ある期間内にどれだけの社員が会社を辞めたかを示す指標で、会社の安定性や働きやすさの目安になります。離職率の計算方法や一般的な目安について詳しく見ていきましょう。


1. 離職率の計算方法

離職率は、通常、1年間など一定期間における数値で計算されます。計算式は以下の通りです:

離職率の計算式

離職率=期間中の離職者数期間中の平均従業員数×100離職率=期間中の平均従業員数期間中の離職者数​×100

  • 期間中の離職者数:その期間内に退職した社員の人数。
  • 期間中の平均従業員数:その期間内の従業員数の平均。以下の計算で求めます:

期間中の平均従業員数=期首従業員数+期末従業員数2期間中の平均従業員数=2期首従業員数+期末従業員数​

たとえば、期首の従業員数が100人、期末の従業員数が90人、1年間に10人が退職した場合:平均従業員数=100+902=95平均従業員数=2100+90​=95離職率=1095×100=10.53%離職率=9510​×100=10.53%

この場合の離職率は約10.5%です。


2. 離職率の目安

業種や企業の規模によっても異なりますが、一般的には次のような目安があります:

  • 5%未満:非常に低い離職率。社員が安定して働きやすい環境が整っていると評価されやすいです。
  • 5〜10%:平均的な離職率。この範囲内であれば、大きな問題はないとされます。
  • 10〜20%:やや高めの離職率。定着率の向上や職場環境の改善が望まれます。
  • 20%以上:高い離職率。職場環境や待遇に何か問題がある可能性が高く、改善の必要性が考えられます。

業界別の傾向

特に離職率が高いとされる業界(飲食業、小売業、ITなど)では15%~20%でも平均的と見なされることがあります。一方、製造業や金融業などでは離職率が低い傾向があり、10%を超えると高いとされることが多いです。


3. 離職率が低いと良い理由

離職率が低い会社は、以下の点で優れているとされます:

  • 従業員満足度が高い:働きやすい環境や適切な報酬、キャリア成長機会があると考えられます。
  • コスト削減:新しい人材の採用やトレーニングにはコストがかかります。離職率が低いと、採用・育成コストを削減できます。
  • 生産性向上:長く勤めている社員が多いほど、経験と知識が社内に蓄積され、生産性も高くなります。

4. 離職率を改善するための取り組み

離職率を低下させるためには、次のような取り組みが考えられます:

  • ワークライフバランスの充実:柔軟な勤務時間やリモートワーク制度など、働きやすい環境を整える。
  • 報酬・評価制度の見直し:適切な報酬と評価制度の確立により、社員のやる気と定着率を向上させる。
  • キャリア支援:スキルアップやキャリアの成長機会を提供し、長期的な視野で社員のやる気を引き出す。
  • メンタルヘルスサポート:ストレス対策やカウンセリングサービスを導入することで、従業員の健康を支える。

5. 離職率が高い業界

離職率が高い業界は、特に労働時間が長く、肉体的・精神的負荷が大きいことが多い職種に見られます。例えば次のような業界が該当します。

1位:飲食業

  • 離職率:30%~50%(特に若年層で高い)
  • 理由:飲食業界は人手不足が続き、労働時間も長く、給与水準が他業界と比べて低い傾向があります。アルバイトやパートの割合が高いこともあり、定着が難しいとされています。

2位:小売業

  • 離職率:20%~30%
  • 理由:小売業界も長時間のシフト勤務や休日出勤が多く、また低賃金であることが多いです。特に繁忙期のシフトが負担となり、若年層の離職が多い傾向にあります。

3位:介護・福祉業

  • 離職率:15%~30%
  • 理由:介護職は肉体的・精神的な負担が大きく、給与水準が他の業界と比べて低いこともあり、離職率が高くなりがちです。労働環境の改善が求められています。

4位:IT業界(特にSES・派遣型エンジニア)

  • 離職率:15%~20%
  • 理由:特にシステムエンジニアや派遣型エンジニアにおいては、プロジェクトベースでの働き方が多く、仕事の安定性が低い場合があります。労働時間が不規則になることが多い点も離職の要因です。

5位:コールセンター

  • 離職率:20%~30%
  • 理由:コールセンター業務はストレスが多く、単純作業の繰り返しもあります。契約社員や派遣社員が多いことも離職率の高さに影響しています。

6. 離職率が低い業界

一方で、労働環境が整備されており、報酬や福利厚生が充実している業界では離職率が低い傾向にあります。

1位:公務員・官公庁

  • 離職率:3%以下
  • 理由:公務員は安定した雇用形態と手厚い福利厚生、働き方改革の進展もあり、離職率が非常に低いです。定年まで勤める人が多い職種です。

2位:金融業界(特にメガバンク・保険)

  • 離職率:5%~7%
  • 理由:給与水準が高く、福利厚生も整っていることから、比較的安定して働ける職場環境が整っています。厳しい競争もありますが、仕事のステータスや収入の安定から定着率が高いです。

3位:製薬業界

  • 離職率:5%前後
  • 理由:製薬業界は給与が高く、また研究開発職などで安定した長期雇用が見込めることから、離職率が低い傾向にあります。学歴が高い人材が多く、技術職のキャリアが確立されやすいことも影響しています。

4位:電力・ガスなどインフラ系

  • 離職率:5%以下
  • 理由:インフラ系の企業は、生活に不可欠な事業を担っており、事業の安定性が高いです。給与も高めで、福利厚生が充実しているため、離職率が低いです。

5位:自動車関連の製造業(特に大手)

  • 離職率:5%~8%
  • 理由:大手製造業は給与が安定しており、また工場のオペレーターやエンジニア職などでは、キャリアの安定性も高いです。従業員の労働環境を重視する企業が多く、働きやすさの向上に努めている企業が多いです。

まとめ

離職率は、従業員の働きやすさや職場環境の健全性を示す大切な指標です。業界平均や会社の規模を考慮しつつ、10%以下であれば一般的に良好とされています。離職率は業界や職種によって大きく異なり、同じ業界でも企業ごとに離職率が異なるため、企業選びの際には業界平均だけでなく個々の企業データも参考にすることが大切です。