高山病の病院での治療方法について

高山病で病院に運ばれた後の治療は、症状の重さと進行度に応じてさまざまな方法が取られます。急性高山病(AMS)、高地脳浮腫(HACE)、高地肺水腫(HAPE)のそれぞれの病態に応じて適切な治療が行われます。以下に病院での具体的な治療方法について説明します。

1. 共通の初期対応

  • 酸素療法: まず、高濃度の酸素を吸入することで低酸素状態を改善し、症状を軽減します。酸素飽和度(SpO2)を95%以上に維持することを目指します。
  • 安静と体温管理: 患者を安静に保ち、体温を適切に管理します。寒冷刺激は体力を消耗させ、症状を悪化させる可能性があるため、保温に努めます。

2. 急性高山病(AMS)の治療

  • 酸素吸入: 上記の酸素療法を継続し、症状の改善を図ります。
  • 薬物治療:
    • アセタゾラミド(ダイアモックス): 呼吸中枢を刺激して換気量を増やし、症状を軽減します。予防にも用いられますが、治療目的でも使用されます。
    • デキサメタゾン: 重症例では脳浮腫を軽減し、神経症状の改善を促します。
  • 降下: 症状が重い場合は、安全な高度まで降下することが推奨されます。適切な高度まで降りることで、症状の改善が期待されます。

3. 高地脳浮腫(HACE)の治療

  • 酸素吸入: 高濃度酸素(通常4〜6リットル/分以上)の投与を行い、酸素欠乏を改善します。
  • 降下: HACEは緊急対応が必要なため、できる限り早く安全な低地まで降下させます。患者の移動にはストレッチャーやヘリコプターが使用されることもあります。
  • 薬物治療:
    • デキサメタゾン: 強力な抗炎症作用があり、脳浮腫を減少させるために使用されます。
    • マンニトール: 浸透圧利尿薬であり、脳浮腫を軽減する目的で使用されることがあります。
  • ガマウバッグ(Gamow Bag): 降下がすぐに行えない場合、携帯用加圧チャンバー(ガマウバッグ)を使用し、擬似的に低地の環境を再現して酸素供給を改善します。

4. 高地肺水腫(HAPE)の治療

  • 酸素吸入: 高濃度酸素(5〜8リットル/分)を吸入し、低酸素血症を改善します。
  • 降下: HAPEも緊急対応が必要なため、可能な限り早急に安全な低地まで降下させます。
  • 薬物治療:
    • ニフェジピン: 肺動脈圧を下げ、肺水腫の進行を防ぎます。
    • 利尿薬: 重度の肺水腫が見られる場合に、体内の余分な水分を排出するために使用しますが、注意深いモニタリングが必要です。
    • PDE-5阻害薬(シルデナフィルなど): 肺動脈圧を下げる効果があり、HAPEの治療に使用されることがあります。
  • 体位管理: 頭を上げた体位(セミファウラー位)にすることで、肺にかかる圧力を軽減し、呼吸を楽にします。
  • 加温加湿酸素: 加温・加湿した酸素を吸入することで、気道を保護し、酸素交換を改善します。

5. その他の治療・対応

  • 循環管理: 高山病は循環動態にも影響を及ぼすことがあるため、必要に応じて輸液管理や血圧の管理を行います。特にHAPEの場合、過剰な輸液は避け、適切な体液管理が求められます。
  • 神経症状の管理: HACEでは神経症状の悪化が見られるため、意識レベルや神経学的評価を定期的に行い、症状の進行を早期に察知することが重要です。

6. 患者教育とフォローアップ

  • 高山病に罹患した患者は、再び高地に行く場合の予防策について教育を受けることが大切です。例えば、登山前にアセタゾラミドを予防的に服用することや、標高上昇のペースを管理することなどが挙げられます。

まとめ

高山病で病院に運ばれた後の治療は、酸素療法と薬物治療、必要に応じた降下や高度順応が中心となります。病態が重い場合には迅速な対応が求められるため、早期発見と適切な治療を行うことが重要です。

高山病の特徴、症状、対策、治療法について