
心停止状態に陥った人の命を救うために不可欠な医療機器、「AED」と「除細動器」。この二つは、しばしば混同されがちですが、その機能や使われ方には明確な違いがあります。簡単に言えば、AEDは除細動器の一種であり、医療知識のない一般市民でも使えるように設計されたものです。
AED(自動体外式除細動器) – あなたにも使える救命の道具
AEDは「Automated External Defibrillator」の略で、日本語では「自動体外式除細動器」と訳されます。その最大の特徴は、操作の自動化にあります。
- 自動解析機能付き:心電図を自動で解析して、ショックが必要かどうかを判断し、使う人に指示を出す。
- 使いやすさ重視:音声ガイドや表示で操作手順を案内し、医療知識がなくても使えるようになっている。
- 設置場所:公共施設や学校、駅など多くの場所に設置されている。
電源を入れると、音声ガイダンスやディスプレイの表示によって、次に何をすべきかを具体的に指示してくれます。傷病者の胸に電極パッドを貼ると、AEDが自動的に心電図を解析し、電気ショック(除細動)が必要かどうかを判断します。そして、電気ショックが必要な場合にのみ、ボタンを押すように指示が出されます。
このように、医学的な専門知識がなくても、その場に居合わせた人がためらうことなく、簡単かつ安全に使えるように工夫されているのがAEDです。2004年7月からは一般市民による使用が認められ、現在では駅や空港、学校、商業施設といった公共の場に広く設置されています。
除細動器 – 医療の現場で使われる専門機器
一方、「除細動器」は、心臓の危険な不整脈(心室細動など)を、電気ショックを与えることで正常なリズムに戻すための医療機器の総称です。AEDもこの除細動器に含まれます。
医療現場、特に病院や救急車などで医師や救急救命士が使用する除細動器は、一般的に「マニュアル(手動式)除細動器」と呼ばれます。これらはAEDとは異なり、以下のような特徴があります。
- 専門家による判断: 使用者が心電図の波形を読み解き、電気ショックの必要性やエネルギー量などを自ら判断して手動で操作します。
- 多機能: 除細動機能だけでなく、心電図のモニタリングや血圧測定など、様々な機能を備えていることが多く、より詳細な容態の把握が可能です。
一目でわかる!AEDと医療用除細動器の比較
項目 | AED(自動体外式除細動器) | 医療用除細動器(マニュアル式) |
主な使用者 | 一般市民 | 医師、救急救命士などの医療従事者 |
操作方法 | 音声ガイダンスに従う自動化された操作 | 使用者が判断する手動操作 |
心電図解析 | 自動で解析 | 使用者が解析・判断 |
電気ショック | 機器が判断し、必要な場合のみ実行 | 使用者がタイミングや強さを判断 |
設置場所 | 公共施設、商業施設、学校など | 病院、救急車など |
まとめ
「除細動器」という大きな枠組みの中に、一般市民向けに特化された「AED」が存在します。目の前で誰かが倒れたとき、そこにAEDがあれば、あなたの一歩踏み出した勇気が尊い命を救うことに繋がります。いざという時のために、AEDの設置場所や使い方について、日頃から関心を持っておくことが大切です。