
「残クレの金利は、残価を含む車両価格全体にかかる」というのは、一見すると通常のローンと同じように見えます。しかし、ここにこそ残クレの「総支払額が割高になる」カラクリが隠されています。
通常ローンと残クレの金利計算の根本的な違い
通常のローンと残クレでは、金利がかかる「対象金額」は同じでも、その金額が「減っていくスピード」が全く違います。
1. 通常ローンの場合
- 金利の計算: ローンの元金に対して、毎月「元利均等方式」で金利を計算します。
- 元金の減り方: 毎月の支払いには、元金の返済分と利息の返済分が含まれています。支払い続けることで、元金(借りているお金)は毎月少しずつ確実に減っていきます。
- 利息の総額: 元金がどんどん減っていくため、利息がかかる対象金額も徐々に減ります。結果として、利息の総額は比較的少なくなります。
2. 残クレの場合
- 金利の計算: 金利は車両価格全体(残価を含む)にかかります。
- 元金の減り方:
- 月々の支払い分: 月々の支払いは、残価を除いた金額を支払います。
- 残価分: この残価分は、契約期間中ずっとローン元金として据え置かれます。
- 利息の総額: 残価分は元金として据え置かれたままなので、この据え置きされた残価に対しても、契約期間中ずっと金利がかかり続けます。
この「残価分にも金利がかかり続ける」という点が、通常のローンとの決定的な違いです。
具体的な例で比較
車両価格300万円、金利5%、5年ローンで比較してみましょう。
【通常のローン】
- ローン元金: 300万円
- 毎月の支払いで元金が徐々に減っていく。
- 利息は減っていく元金に対して計算されるため、利息の総額は比較的抑えられる。
【残クレ】
- 車両価格: 300万円
- 残価: 150万円(50%と仮定)
- 月々支払い分のローン元金: 150万円
- 据え置きの残価: 150万円
月々の支払いは150万円分に対して行いますが、金利は300万円全体にかかり続けます。つまり、月々の支払いで元金が減っていくのは150万円分だけで、残り150万円分(残価)には、5年間ずっと金利がかかり続けます。
比較表:通常のローン vs 残クレ
項目 | 通常のローン | 残クレ |
ローン元金 | 300万円 | 300万円 |
最終回支払い額(残価) | なし | 150万円 |
月々の支払い額(概算) | 約56,600円 | 約28,300円 |
5年間の利息総額 | 約396,000円 | 約702,000円 |
5年間の総支払額 | 約3,396,000円 | 約3,402,000円* |
残クレの計算は最終的に車を一括で買い取ることを想定。
*残クレの総支払額は、月々の支払い総額(約1,698,000円)+最終回の残価(150万円)+金利総額(702,000円)です。
表から読み取れるポイント
1. 月々の支払額
表を見て明らかなように、残クレの月々の支払い額(約28,300円)は、通常のローン(約56,600円)の半分以下です。これが残クレの最大の魅力であり、「月々の負担を抑えて憧れの車に乗りたい」というニーズに応える理由です。
2. 利息総額
月々の支払額は安くても、残クレの利息総額(約70.2万円)は、通常のローン(約39.6万円)より約30万円も高くなります。 これは、残価分(150万円)にも契約期間中ずっと金利がかかり続けるためです。
3. 5年間の総支払額
最終的に車を買い取る場合、残クレは通常のローンより総支払額がわずかに高くなることが分かります。 この差額は、月々の支払いを低く抑えるためのコストと考えることができます。
まとめ
「金利が車両価格全体にかかる」という点は共通していますが、**「残価設定型クレジットは、残価部分の元金が返済期間中に全く減らない」**という仕組みが、通常のローンよりも利息の総額を高くする原因です。
残クレは、「車を買い取るか、返却するか」で総支払額が大きく変わるのが特徴です。そのため、車を長く所有したい人にとっては、最終的にかかる総費用をしっかり把握しておくことが非常に重要になります。