
出生前診断で検出できる異常と検出できない異常について、以下に簡潔にまとめます。
1. 出生前診断でわかる異常
出生前診断は、主に染色体異常や特定の遺伝子異常、形態異常を検出します。以下が代表例です:
- 染色体異常:
- ダウン症(21トリソミー):染色体21番のトリソミーによる知的障害や心臓異常など。
- エドワーズ症(18トリソミー):重度の身体的・知的障害。
- パトー症(13トリソミー):重篤な先天異常。
- 性染色体異常:ターナー症候群(XO)、クラインフェルター症候群(XXY)など。
- 遺伝子異常:
- 一部の単一遺伝子疾患(例:嚢胞性線維症、脊髄性筋萎縮症など)、ただし検査対象となる遺伝子は限定される。
- 形態異常:
- 超音波検査で検出可能な構造的異常(例:神経管欠損症、心臓奇形、四肢異常、腎臓異常など)。
- その他:
- NIPTや羊水検査で、特定の染色体や遺伝子の欠失・重複(例:1p36欠失症候群など)の一部が検出可能。
2. 出生前診断でわからない異常
出生前診断には限界があり、すべての異常を検出することはできません。以下は検出が難しい、または通常検出されない異常です:
- 軽度の形態異常:
- 超音波で視認できない小さな異常(例:軽度の心臓弁異常や微細な脳構造異常)。
- 後天的な障害:
- 出生後の環境や感染症による障害(例:脳性麻痺の一部、発達障害の一部)。
- 多因子遺伝性疾患:
- 遺伝と環境の相互作用による疾患(例:自閉症スペクトラム障害、ADHD、糖尿病など)は、出生前診断では予測困難。
- 一部の遺伝子異常:
- 検査対象外の遺伝子変異や、まれな遺伝性疾患(例:特定の代謝異常症や神経変性疾患)。
- 遺伝子検査の範囲は施設や検査キットに依存し、全ての遺伝子異常を網羅することは不可能。
- 機能的異常:
- 知能や行動に関する異常(例:学習障害、精神疾患の素因)は、染色体や形態の検査では検出不可。
- 偽陰性のケース:
- 検査の精度やタイミングにより、異常が見逃される可能性(例:NIPTは確率診断であり、確定診断ではない)。
3. 補足と注意点
- 検査の限界:出生前診断は「異常がない」ことを100%保証するものではなく、検出できる異常は検査の種類や時期に依存します。
- カウンセリングの重要性:診断結果の解釈や限界を理解するため、遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。
- 倫理的考慮:異常が検出された場合の対応(妊娠継続の選択など)は、親の価値観や状況に大きく影響されます。
4. 具体例と検査方法の関連
- NIPT:染色体異常(21、18、13トリソミーなど)の高精度なリスク評価が可能だが、形態異常や軽度の遺伝子異常は検出不可。
- 超音波検査:形態異常の検出に優れるが、染色体や遺伝子レベルの異常は分からない場合が多い。
- 羊水検査・絨毛採取:染色体や特定の遺伝子異常を詳細に調べられるが、対象外の遺伝子や機能的異常は検出不可。