
生活保護は、日本国憲法第25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するための制度です。生活に困窮している方に対し、その状況に応じて必要な保護を行い、自立を助長することを目的としています。
生活保護の基本的な仕組み
- 補足性の原理 生活保護は、申請者とその世帯員が持っている資産、能力、その他あらゆるもの(年金、手当、親族からの扶養など)をすべて活用してもなお生活が維持できない場合に、その不足分を補う形で実施されます。
- 最低生活費との比較 厚生労働大臣が定める基準に基づいて計算された世帯の「最低生活費」と、世帯全体の収入(働くことによる収入、年金、仕送りなど)を比較します。
- 最低生活費 > 収入 の場合、その差額が保護費として支給されます。
- 世帯単位の原則 生活保護は原則として世帯を単位として、保護の要否や程度が決められます。世帯員全員の収入や資産が審査対象となります。
- 申請保護の原則 保護は、原則として本人、扶養義務者、または同居の親族からの申請に基づいて開始されます。
保護の種類(8つの扶助)
生活保護費は、個々の世帯の状況に応じて、以下の8種類の扶助から必要なものが組み合わされて支給されます。
- 生活扶助: 日常生活に必要な費用(食費、光熱水費、被服費など)
- 住宅扶助: 家賃、地代、住宅の維持・補修に必要な費用
- 教育扶助: 義務教育に必要な費用(学用品、給食費、通学費など)
- 医療扶助: 医療サービスの費用(原則として現物給付)
- 介護扶助: 介護サービスの費用(原則として現物給付)
- 出産扶助: 出産に必要な費用
- 生業扶助: 生業に必要な費用や、技能習得、高校等への就学に必要な費用
- 葬祭扶助: 葬儀に必要な費用
申請の流れ
- 相談:お住まいの地域を所管する福祉事務所(市区町村役場にあることが多い)の窓口で相談します。
- 申請:申請書や必要書類を提出します。必要な書類が揃っていなくても申請は可能です。
- 調査:福祉事務所の担当者(ケースワーカーなど)が、生活状況の実地調査(家庭訪問など)、預貯金・保険・不動産などの資産調査、扶養義務者による扶養の可否調査などを行います。
- 決定:調査に基づき、申請から原則14日以内に保護を開始するかどうかが決定され、通知されます。
申請場所:住んでいる地域の福祉事務所(市区町村役場内など)。
必要書類:身分証明書、収入や資産に関する書類(通帳、給与明細など)。
支給額
支給額は、世帯の人数、年齢、地域(物価水準による「級地」)、住居費などによって異なります。
例:東京23区(1級地)の単身世帯の場合、月額約12~15万円(生活扶助+住宅扶助)が目安。
最近の動向(2025年時点)
- 生活保護の基準額は、物価や経済状況に応じて定期的に見直されます。2023年の見直しでは、一部地域で基準額が引き下げられた一方、子育て世帯向けの加算が強化されました。
- コロナ禍や物価高騰の影響で、申請件数が増加傾向にある地域も。自治体によっては、オンライン相談や支援強化の動きが見られます。
注意点
- 資産の活用:預貯金や生活に利用していない不動産、自動車などは、原則として売却や解約をして生活費に充てる必要があります(ただし、例外的に保有が認められる場合もあります)。
- 稼働能力の活用:働くことができる方は、能力に応じて働くことが求められます。
- 扶養義務者の扶養:親族(親、子、兄弟姉妹など)からの援助を受けられる場合は、それが生活保護に優先します。ただし、親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません。