疲労骨折(ひろうこっせつ)について詳しく解説疲労骨折は「繰り返しの軽い負荷(ストレス)」によって、骨に微細な亀裂(マイクロクラック)が入り、蓄積して完全な骨折に至るものです。
外傷性骨折(一発でバキッと折れる)とは異なり、「気づかないうちに進行する」のが特徴です。
1. どんな人に起こりやすい?(リスク要因)
| リスク要因 | 説明 |
|---|
| スポーツ選手 | ランニング、ジャンプ、投球など繰り返し負荷がかかる競技 |
| 軍人・警察・消防士 | 長時間の行軍や訓練 |
| ダンサー・バレエ | つま先立ち(ポワント)による足の負荷 |
| 女性アスリート | 特に「女性アスリートトライアド」(食事障害・無月経・骨密度低下) |
| 急な運動量増加 | 初心者が急に走り込みを増やす |
| 不適切な靴・地面 | クッション性の低い靴、硬い地面 |
| 骨密度低下 | 骨粗鬆症、ビタミンD不足、ステロイド使用 |
2. よく起こる部位(頻度順)
| 部位 | 割合(約) | 関連スポーツ |
|---|
| 脛骨(すね) | 40–50% | ランニング、バスケ、サッカー |
| 中足骨(足の甲) | 20–30% | マラソン、ダンス、行軍 |
| 大腿骨(太もも) | 10% | 長距離ランナー |
| 腓骨(すね外側) | 5–10% | ランニング |
| 骨盤・仙骨 | まれ | 長距離ランナー(女性に多い) |
3. 症状の進行(4段階)
| 段階 | 症状 |
|---|
| 1. 軽度 | 運動後に軽い痛み(翌朝は消える) |
| 2. 中等度 | 運動中も痛むが、休めば軽減 |
| 3. 高度 | 日常生活でも痛む(歩くだけで痛い) |
| 4. 完全骨折 | 突然「バキッ」と音がして立てなくなる |
ポイント:初期は「筋肉痛」と間違えやすく、**「休んでも2〜3日で痛みが消えない」**場合は要注意!
4. 診断方法
| 検査 | 特徴 |
|---|
| レントゲン(X線) | 初期は異常なし(2〜3週後から骨吸収像が見える) |
| MRI | 最も早期に診断可能(骨髄浮腫=むくみが見える) |
| 骨シンチグラフィ | 感度は高いが放射線被曝あり |
| CT | 骨折線がはっきり見たいとき |
ゴールデンタイム:痛みが出て2週間以内にMRIで診断 → 早期治療で完治率アップ!
5. 治療の基本(R.I.C.E + 段階的復帰)
初期(痛みが出たらすぐ)
- Rest(休息):負荷を完全に中止(最低2〜6週間)
- Ice(冷却):1回15分、1日3〜4回
- Compression(圧迫):テーピングやサポーター
- Elevation(挙上):心臓より高く
中期(痛みが軽減したら)
- 非荷重運動:プール歩行、自転車(エアロバイク)
- 理学療法:筋力強化、バランス訓練
後期(復帰プログラム)
| 週 | 内容 |
|---|
| 1–2 | 歩行のみ(痛みゼロを確認) |
| 3–4 | ジョギング(5分→10分→15分) |
| 5–6 | インターバル走(痛みが出たら即中止) |
| 7〜 | 競技復帰(徐々に強度を上げる) |
平均治癒期間:6〜12週間(部位による)
6. 再発予防の5つのポイント
- 漸進的負荷
→ 週の走行距離を10%ルール(前週より10%まで増やす)
- 適切なシューズ
→ クッション性、足型に合ったもの(2〜3ヶ月ごとに交換)
- 栄養管理
- カルシウム:1000mg/日
- ビタミンD:800〜2000IU/日
- タンパク質:1.2〜2.0g/kg体重
- クロストレーニング
→ ランニングの日と水泳の日を交互に
- 定期チェック
→ 痛みが出たら即休養(我慢は禁物!)
7. 要注意!「危険な疲労骨折」
| 部位 | リスク |
|---|
| 大腿骨頸部 | 血流が悪く偽関節(くっつかない)になりやすい |
| 第5中足骨基部(ジョーンズ骨折) | 治りにくく手術が必要な場合も |
| 脛骨前内側 | 慢性化しやすい |
→ これらはMRIで早期発見+専門医受診が必須!
まとめ:疲労骨折のキーワード
| キーワード | 意味 |
|---|
| 「痛みが休んでも消えない」 | 筋肉痛との区別 |
| 「徐々に悪化」 | 初期は軽い → 放置で完全骨折 |
| 「MRIが最強」 | レントゲンでは見えない |
| 「6〜12週で完治」 | 焦らず休む |
| 「10%ルール」 | 再発予防の鉄則 |