骨折の全治期間はどれくらい? 股関節、手首、足首の骨折部位別「治癒期間」と「早期リハビリ」の重要性について

大人の骨折(主に成人の骨折)は、骨の状態や部位、患者の年齢・健康状態によって治療法や期間が大きく異なります。以下では、一般的な概要を説明しますが、これは医療的な一般知識に基づくものであり、個別のケースでは必ず医師の診断と相談を優先してください。情報は主に日本国内の整形外科関連のデータや調査を参考にしています。高齢者(65歳以上)の骨折が多く、骨粗鬆症が関連しやすい点に注意が必要です。

1. 治療法

骨折の治療は、主に以下の2つに分けられます。選択は骨折のずれの程度、部位、患者の全身状態で決まります。

  • 保存療法(非手術治療):
    • 骨のずれが少ない場合に適します。ギプス固定や装具で骨を安定させ、自然治癒を待ちます。
    • 例: 手首(橈骨遠位端骨折)の軽度の場合、ギプスで固定。
    • 利点: 手術リスクを避けられる。
    • 欠点: 長期安静が必要で、筋力低下や合併症(床ずれ、肺炎)のリスクが高い。特に高齢者では避けられる傾向。
  • 手術療法:
    • ずれが大きい場合や関節内骨折に適します。早期手術(負傷後48時間以内)が推奨され、合併症を防ぎます。
    • 方法:
      • 骨接合術: ねじ、プレート、金属棒(髄内釘)で骨を固定。例: 大腿骨骨折でよく用いられます。
      • 人工関節置換術: 骨頭や関節を人工物に置き換え。例: 大腿骨頸部骨折の高齢者で、骨癒合が期待しにくい場合。
    • 利点: 正確な整復で早期リハビリが可能になり、社会復帰が早まる。
    • 欠点: 感染、出血、麻酔リスクあり。金属物は後日除去が必要な場合も。
    • 全体の約94%が手術を選択(特に股関節骨折)。

リハビリテーションは手術直後から開始し、筋力回復を重視。骨粗鬆症治療(ビタミンD3、ビスフォスフォネートなど)を併用することが多いです。

2. 治療期間(全治期間)

骨の癒合には個人差(年齢、栄養状態、喫煙など)が大きく、目安は以下の通り。ヒビ程度なら短く、重症骨折なら長引きます。

骨折部位の例保存療法の目安手術療法の目安備考
手首(橈骨遠位端)4〜6週間(ギプス固定)6〜8週間(手術後リハビリ含む)ずれなしで日帰り可能。
足首(足関節)6〜8週間8〜12週間免荷期間(体重かけない)が必要。
鎖骨4〜6週間6〜8週間保存療法が主流。
大腿骨(脚の付け根)3〜6ヶ月3〜6ヶ月高齢者で長引く。リハビリで歩行回復。
骨盤3〜6ヶ月4〜8ヶ月安定型は保存、不安定型は手術。
  • 全治まで: 軽症で1〜2ヶ月、重症で6ヶ月以上。早期リハビリで短縮可能。
  • 高齢者: 治癒遅延しやすく、二次骨折予防が重要。

3. 入院期間

入院は手術の有無や合併症で変動。日本の平均在院日数は先進国で長いのが特徴で、2020年の患者調査では骨折全体で約38.5日(男性29.5日、女性43.5日)。

骨折部位の例入院期間の目安備考
手首日帰り〜1〜2週間ブロック麻酔で短縮可能。
足首4〜30日術後免荷で施設移行の場合長引く。
大腿骨(股関節)2〜4週間(急性期)+ リハビリ施設全体で30〜40日。2022年以降、早期手術で短縮傾向。
骨盤2〜6週間不安定型で長め。
  • 全体平均: 股関節骨折で32.5〜40.7日(DPCデータによる)。
  • 短縮要因: 早期手術(48時間以内)とリハビリ。退院後、施設入所で延長も。

4. 診療報酬(医療費・保険適用)

日本では国民健康保険が適用され、患者負担は原則3割(70歳以上は1〜2割)。診療報酬は厚生労働省の点数制度(1点=10円)で算定され、病院が保険者から請求。骨折治療はDPC(診断群分類包括評価)制度が主で、入院日数に応じた定額制。

  • 主な報酬項目:
    • 入院基本料: DPC病院で1日あたり数万円(係数で変動)。股関節骨折の場合、包括額に手術・検査含む。
    • 手術料: 骨接合術で約10〜20万円(点数換算)。人工関節置換で高額。
    • リハビリ料: 1回あたり約5,000〜10,000円。
    • 2022年4月以降: 股関節骨折の早期手術(48時間以内)と骨粗鬆症二次予防で追加報酬あり。合併症予防を促進。
  • 患者負担の目安(3割負担、高齢者以外):
    • 軽度骨折(保存療法): 数万円〜10万円(通院含む)。
    • 重度(手術+入院1ヶ月): 20〜50万円。総医療費は年間32万〜100万円超(骨折前後差分)。
    • 例: 股関節骨折の総医療費(6ヶ月前後): 平均約80万円(患者負担24万円)。

詳細は病院のDPC/PDPS適用で異なり、事前認定で高額療養費制度(月額上限)を利用可能。2025年現在、物価スライドで点数が微調整されています。骨折は転倒予防(骨密度検査)が重要です。症状が出たら整形外科を受診を。参考文献は主に日本整形外科学会や厚生労働省データに基づきます。