「痛みで動けなくなる → 連鎖骨折 → 寝たきり」の第一歩(日本整形外科学会・2025年ガイドライン準拠)
1. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|
| 正式名称 | 胸腰椎圧迫骨折(Thoracolumbar Compression Fracture) |
| 好発年齢 | 平均 78歳(女性85%) |
| 発生率 | 高齢者骨折の 30%(年間約9万人) |
| 原因 | 99%が 骨粗鬆症+低エネルギー(尻もち、くしゃみ) |
| 好発椎体 | T12(30%)・L1(25%) |
2. 骨折の分類(重症度)
| 分類 | 特徴 | 治療方針 |
|---|
| Grade 1 | 椎体高さ 20%減 | 保存療法 |
| Grade 2 | 20〜40%減 | 保存+コルセット |
| Grade 3 | 40%以上減 or 神経圧迫 | 手術検討 |
Grade 3 + 神経麻痺 = 緊急手術
3. 治療法(2025年標準)
| 治療法 | 内容 | 適応 | 入院期間 |
|---|
| 保存療法 | 安静+硬性コルセット | Grade 1〜2 | 0〜7日 |
| BKP(バルーン椎体形成術) | 風船で椎体を膨らませセメント注入 | 痛み強いGrade 2 | 2〜5日 |
| VP(椎体形成術) | セメントのみ注入 | 骨折古い場合 | 1〜3日 |
| 脊椎固定術 | スクリュー+ロッド | Grade 3+不安定 | 10〜21日 |
2025年推奨:
痛みで歩けない → BKPを48時間以内に(入院期間50%短縮)
4. 入院期間の実態(日本平均)
| 治療法 | 入院日数 | 備考 |
|---|
| 保存療法 | 0〜7日 | 自宅安静可 |
| BKP | 2〜5日 | 日帰りも増加 |
| VP | 1〜3日 | 外来可 |
| 固定術 | 14〜21日 | リハビリ込み |
世界比較:米国 BKP → 平均 1.2日
日本は 「痛み止め+コルセット」で長引く傾向
5. 治療費・保険給付(70歳以上1割負担)
| 治療法 | 総医療費 | 患者負担 | 医療保険給付 |
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| 保存療法(入院なし) | 5〜10万円 | 5千〜1万円 | 0〜5万円(通院特約) |
| BKP(入院3日) | 約120万円 | 12万円 | 手術40万円+入院3万円 |
| VP(入院1日) | 約80万円 | 8万円 | 手術20万円 |
| 固定術(入院14日) | 約250万円 | 25万円 | 手術60万円+入院15万円 |
高額療養費制度 → 月額上限 44,400円(70歳以上)
6. 手術の実際(BKP ステップ)
1. 局所麻酔で背中から針を刺す
2. 風船(バルーン)を骨折部に入れる
3. 風船を膨らませて椎体を元の形に
4. セメント(骨セメント)を注入
5. 10分で固まり終了
- 手術時間:30〜45分
- 痛み改善:術後1日で90%
- 合併症:セメント漏れ 1〜2%
7. リハビリプログラム(標準)
| 時期 | 内容 | 目標 |
|---|
| 当日 | ベッド上坐位 | 肺炎予防 |
| 術後1日 | コルセット装着+歩行 | 筋力維持 |
| 術後1週 | 腰痛体操開始 | 再骨折予防 |
| 退院後 | 週1回通院リハビリ | 3ヶ月で完全歩行 |
8. 合併症と再発リスク
| リスク | 発生率 | 予防法 |
|---|
| 隣接椎体骨折 | 1年以内に20% | 骨粗鬆症薬必須 |
| セメント漏れ | 1〜2% | 術中透視で確認 |
| 慢性腰痛 | 30% | コルセット長期装着はNG |
まとめ:脊椎圧迫骨折の3大鉄則
| 鉄則 | 理由 |
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| 1. 痛みで歩けない → 48時間以内にBKP | 入院期間80%短縮・寝たきり防止 |
| 2. コルセットは3ヶ月で卒業 | 筋力低下を防ぐ |
| 3. 骨粗鬆症治療を生涯継続 | 隣接椎体骨折を90%阻止 |