靭帯の役割、損傷の原因、急性期の正しいRICE処置について

靭帯損傷(じんたいそんしょう)や靭帯断裂(じんたいだんれつ)について、わかりやすく説明します。医学的な内容なので、参考情報としてお使いください。症状が出ている場合は、必ず整形外科医に相談してください。


1. 靭帯とは?

  • 靭帯は、骨と骨をつなぐ強靭な繊維組織です。
  • 関節の安定性を保ち、過剰な動きを防ぐ役割があります。
  • 主な例:膝の前十字靭帯(ACL)後十字靭帯(PCL)内側側副靭帯(MCL)、足首の外側靭帯など。

2. 靭帯損傷・断裂の分類(重症度)

靭帯の損傷は、グレード(Grade)1〜3に分けられます。

グレード状態症状・特徴
Grade 1(軽度)靭帯の微小な損傷(伸びる・軽い裂け目)軽い痛み、腫れは少ない、歩ける
Grade 2(中度)靭帯の一部断裂腫れ・痛みが強く、関節が不安定、歩行困難
Grade 3(重度)靭帯の完全断裂強い痛み、大きな腫れ、関節がグラグラ(不安定)

3. 原因

  • スポーツ外傷(サッカー、バスケ、スキーなど)
    • 急な方向転換、着地ミス、接触など。
  • 転倒・交通事故
  • 加齢による靭帯の弱化(特に高齢者)

4. 代表的な靭帯損傷の例

① 膝の前十字靭帯(ACL)断裂

  • 原因:急なストップ&ターン、ジャンプ着地など。
  • 症状
    • 「ポップ音」がする(断裂時)
    • 膝がガクッとなる(不安定感)
    • 腫れ(血腫)、歩けないほどの痛み
  • 診断:MRI、Lachmanテストなど
  • 治療
    • 保存療法(リハビリ)→ スポーツ復帰しない場合
    • 手術(再建術)→ スポーツ選手はほぼ必須

② 足首の外側靭帯損傷(捻挫の重症版)

  • 原因:足首を内側にひねる(内反捻挫)
  • 症状:腫れ、歩けない、押すと痛い
  • 治療
    • Grade 1・2:RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)+リハビリ
    • Grade 3:ギプス固定 or 手術(まれ)

5. 治療の基本(RICE法)

急性期(受傷直後〜数日)の対応:

  1. Rest(安静):体重をかけない
  2. Ice(冷却):1回15〜20分、1日数回
  3. Compression(圧迫):テーピングやサポーター
  4. Elevation(挙上):心臓より高く上げる

6. リハビリの重要性

  • 靭帯が治っても筋力低下関節の不安定性が残る。
  • 理学療法士と一緒に:
    • 筋トレ(特に大腿四頭筋、ハムストリング)
    • バランス訓練
    • スポーツ復帰プログラム

7. 手術が必要な場合

  • 靭帯再建術(特にACL)
    • 自分の腱(ハムストリングや膝蓋腱)を使う
    • 術後6〜12ヶ月でスポーツ復帰可能
  • 手術のタイミング:腫れが引いてから(受傷後2〜3週間)

8. 予防法

  • 筋力トレーニング(特に体幹・下肢)
  • 適切なウォームアップ
  • テーピングやサポーターの使用
  • 疲労時の無理な運動を避ける

まとめ

項目内容
軽度(Grade 1)数週間で治る
中度(Grade 2)1〜2ヶ月リハビリ
重度(Grade 3)手術+6〜12ヶ月リハビリ

注意:自己判断せず、整形外科でMRI検査を受けるのが確実です。特に「膝がグラグラする」「歩けない」場合は早急に受診を。