
十二指腸潰瘍は、十二指腸(胃のすぐ下に続く小腸の最初の部分)の粘膜が傷つき、深い欠損(潰瘍)ができた状態です。胃潰瘍と似ていますが、発生場所が異なり、症状や原因に若干の違いがあります。日本ではピロリ菌感染が主な原因で、比較的よく見られる疾患です。
原因
- ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)感染
- 最も多い原因(約70-90%)。ピロリ菌が十二指腸の粘膜を傷つけ、酸に弱くします。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用
- ロキソプロフェン(ロキソニン®)、アスピリン、イブプロフェンなど。粘膜の保護機能を低下させます。
- その他の要因
- ストレス、過度の飲酒、喫煙、遺伝的要因、胃酸の過剰分泌(稀にゾリンジャー・エリソン症候群)。
症状
- 上腹部痛(みぞおちの痛み)
- 空腹時に強く、食後2-3時間で悪化(胃潰瘍とは逆)。夜間や早朝に痛むことが多い。
- 胸やけ、吐き気、膨満感。
- 重症化すると**出血(吐血・黒色便)や穿孔(穴が開く)**で激痛・ショック状態に。
診断方法
- 内視鏡検査(胃カメラ):潰瘍の有無・場所・ピロリ菌の確認に必須。
- ピロリ菌検査:呼気試験、便抗原検査、血液検査、内視鏡時の生検。
- 血液検査やX線(バリウム造影)で補助診断。
治療
- 薬物療法(基本は8-12週間)
- プロトンポンプ阻害薬(PPI):オメプラゾール(オメプラール®)、ランソプラゾール(タケプロン®)など。胃酸分泌を強力に抑える。
- ピロリ菌除菌療法:PPI+抗生物質2種(アモキシシリン+クラリスロマイシンなど)の3剤併用。成功率90%以上で再発予防に有効。
- NSAIDsが原因なら中止・代替薬検討。
- 生活習慣の改善
- 禁煙、節酒、刺激物(辛い物、コーヒー)の避け方。
- 規則正しい食事(空腹を避ける)。
- 重症例
- 出血時は内視鏡止血術、穿孔時は手術。
合併症と予防
- 合併症:出血、穿孔、狭窄、まれに癌化(胃潰瘍より低い)。
- 予防:ピロリ菌検査・除菌(特に家族に潰瘍歴がある場合)、NSAIDsの必要時使用、ストレス管理。
注意点
- 症状がある場合は早めに消化器内科を受診してください。自己判断で市販の胃薬を長期間使うと悪化の恐れがあります。
- ピロリ菌除菌後は再発率が激減(1%未満)しますが、NSAIDs使用時は再発リスクあり。
参考:日本消化器病学会ガイドライン(2023年改訂)など。個別の症状は医師に相談を。
