
咳、発熱、倦怠感。これらの症状は肺炎でも風邪でも見られますが、肺炎が「細菌性」か「ウイルス性」かによって、治療法は180度異なります。
細菌性肺炎は急激に悪化し抗菌薬が有効である一方、ウイルス性肺炎は抗菌薬が効かず対症療法が中心です。原因を誤って治療すれば、重症化や耐性菌増加という大きなリスクにつながります。
この記事では、医師が鑑別診断に使う症状、血液検査(CRP、白血球)、胸部X線所見の違いを詳細に比較します。
- 細菌性肺炎:39℃以上の高熱、膿性痰、白血球・CRPの著しい上昇
- ウイルス性肺炎:乾いた咳、全身倦怠感、すりガラス影
細菌性肺炎とウイルス性肺炎 違いまとめ
| 項目 | 細菌性肺炎 | ウイルス性肺炎 |
|---|---|---|
| 原因 | 細菌 肺炎球菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、ブドウ球菌など | ウイルス インフルエンザ、RS、コロナ(COVID-19)、アデノなど |
| 発症の速さ | 急激(数時間〜1日) | 徐々に(2〜5日かけて) |
| 主な症状 | – 高熱(39℃以上) – 膿性痰(黄色・緑) – 胸痛(刺すような) – 寒気・震え | – 微熱〜中程度の発熱 – 乾いた咳 – 全身倦怠・筋肉痛 – 鼻水・喉痛(風邪症状) |
| 好発年齢 | 高齢者・基礎疾患あり | 全年齢(特に乳幼児・高齢者) |
| 血液検査 | – 白血球 ↑↑(10,000以上) – CRP ↑↑(10以上) – プロカルシトニン ↑ | – 白血球 正常 or ↓ – CRP ↑(5以下が多い) – プロカルシトニン 正常 |
| 胸部X線/CT | – 限局性・葉性浸潤影(右下肺に多い) – 膿瘍・空洞(重症時) | – 両側性・びまん性 – すりガラス影(COVID-19典型) |
| 喀痰 | 膿性・グラム染色で菌が見える | 痰少なく、菌は出ない |
| 治療 | 抗菌薬が効く (ペニシリン、セフトリアキソンなど) | 抗菌薬は無効 対症療法+一部抗ウイルス薬 |
| 治療薬例 | アモキシシリン、セフトリアキソン | タミフル(インフル)、レムデシビル(COVID) |
| 治療期間 | 5〜14日 | 3〜10日(自然軽快も) |
| 死亡率 | 5〜15%(高齢者で高い) | 1〜10%(COVID重症で↑) |
| 予防 | 肺炎球菌ワクチン | インフル・COVIDワクチン |
| 代表例 | 肺炎球菌性肺炎、誤嚥性肺炎 | インフルエンザ肺炎、COVID-19肺炎 |
イメージでわかる違い
細菌性肺炎:「急に39℃!緑の痰!胸が刺す!」
→ 抗菌薬でバッチリ治る
ウイルス性肺炎:「ジワジワ熱…乾いた咳…全身ダルい」
→ 抗菌薬効かず、対症療法で様子見
鑑別診断のポイント(医師が使う)
| 検査 | 細菌性 | ウイルス性 |
|---|---|---|
| 発熱パターン | 急激・持続 | 波あり・徐々に |
| 白血球 | ↑↑(好中球) | 正常 or ↓(リンパ球↑) |
| CRP | 10以上 | 5以下 |
| 胸部X線 | 片側・限局 | 両側・びまん |
| 喀痰グラム染色 | 菌がゴロゴロ見える | 菌なし |
治療の落とし穴
| 間違い | 結果 |
|---|---|
| ウイルス性に抗菌薬を出す | 耐性菌増加・副作用のみ |
| 細菌性に抗ウイルス薬だけ | 重症化・死亡リスク↑ |
→ 「原因を検査で特定」が命を救う!
まとめ
細菌性肺炎 = 「急・高熱・膿痰・抗菌薬が効く」
ウイルス性肺炎 = 「徐々・乾咳・全身症状・抗菌薬無効」
受診の目安
| 症状 | 疑う肺炎 |
|---|---|
| 39℃+緑の痰+胸痛 | → 細菌性(即抗菌薬!) |
| 37〜38℃+乾咳+筋肉痛 | → ウイルス性(インフル/COVID検査) |
「いつもと違う咳・息切れ」→ 胸部X線+血液検査を!
