肺炎は高齢者の「命を奪うNo.1感染症」! 「熱なし・咳なし」でも危険なサインと予防の「3本柱」

高齢者、特に75歳以上にとって、肺炎は「命を奪うNo.1感染症」であり、発症率は若年者の10倍以上、死亡率は20〜40%に達します。その最大の原因は、食べ物や唾液が肺に入る誤嚥性肺炎です。

しかし、高齢者の肺炎は発熱や咳がないなど、症状が弱く非典型的であるため、発見が遅れがちです。「いつもと違う」「ぼーっとしている」「食欲がない」といったサインこそ、重症化の危険信号です。

この記事では、高齢者肺炎の特徴から、誤嚥性肺炎のリスク、そして「熱がないから大丈夫」という誤解が招く危険を解説します。

  • 死亡リスクを8割減らす予防の「3本柱」(ワクチン、口腔ケア、誤嚥防止)
  • 即入院が必要な非典型症状と、家族がすべき緊急時の行動
  • CT推奨など、高齢者特有の診断のポイント

1. 高齢者肺炎の特徴

項目内容
発症率65歳以上で10倍以上 85歳以上で年間1,000人に10人が発症
死亡率20〜40%(全国平均の4〜8倍
原因No.1誤嚥性肺炎(60〜70%) → 食べ物・唾液が肺に入る
その他原因肺炎球菌、インフルエンザ、COVID-19
症状が「弱い」「発熱なし」「咳なし」 でも重症化

2. 高齢者特有の「非典型症状」(要注意!)

症状頻度
意識低下・ぼーっとする
食欲不振・飲めなくなる
転倒・ふらつき
活動量の急減
微熱(37℃台)のみ
「いつもと違う」最大のサイン!

「熱がないから大丈夫」→ 危険!


3. リスク要因(重症化の原因)

リスク死亡リスク倍増
嚥下障害(むせやすい)5〜10倍
寝たきり・認知症3〜5倍
糖尿病・心不全・COPD2〜3倍
免疫抑制剤・ステロイド2倍
口腔内不衛生(歯周病)2倍

4. 診断のポイント

検査高齢者での特徴
胸部X線/CT影がはっきりしないことも → CT推奨
血液検査CRP↑でも白血球正常(免疫低下)
SpO292%以下で即入院
嚥下機能VE検査(嚥下造影)で誤嚥確認

「影が薄い」= 軽症ではない!


5. 治療の鉄則

治療ポイント
抗菌薬広域から開始(メロペネムなど) 誤嚥性は嫌気性菌もカバー
酸素投与SpO2 94%以上を維持
栄養・水分経管栄養(鼻から管)が必要な場合も
リハビリ早期離床(寝たきり防止)
誤嚥防止頭を30°以上上げる、トロミ剤使用

治療期間:10〜14日以上(再発防止)


6. 予防の「3本柱」

予防法効果
① 肺炎球菌ワクチン重症化を70%減 PCV20を1回(65歳で公費)
② インフルエンザワクチン毎年秋に接種
③ 口腔ケア+誤嚥防止– 歯磨き・うがい – トロミ飲料 – 嚥下リハビリ

ワクチン2つ+口腔ケア → 肺炎リスク8割減!


7. 家族・介護者が見るべき「危険信号」

症状即救急!
「飲めない・食べない」
意識がはっきりしない
呼吸が速い(30回/分以上)
唇や爪が青い
尿が出ない

8. 統計データ(日本・2025年)

項目数値
肺炎による年間死亡数約8万人(95%が65歳以上)
死因順位第5位(老衰の次)
平均在院日数20〜30日
再発率1年以内に30%

9. 高齢者肺炎の「治療・予防フローチャート」

65歳の誕生日
 ↓
【予防】
・肺炎球菌ワクチン(PCV20)← 公費ハガキで!
・毎年インフルワクチン
・口腔ケア+嚥下訓練
 ↓
【発症疑い】
「いつもと違う」+微熱・食欲不振
 ↓
【受診】
・内科 or 呼吸器科
・胸部CT+CRP+SpO2
 ↓
【診断】
・誤嚥性?細菌性?
 ↓
【治療】
・入院+広域抗菌薬+酸素
・嚥下リハビリ
 ↓
【退院後】
・再発防止:口腔ケア+ワクチン

10. 家族へのアドバイス

やること理由
「飲む量」を記録脱水=重症化
体位を30°キープ誤嚥防止
口腔ケアを毎日細菌減少
ワクチン状況を確認1回で済む!

まとめ:高齢者肺炎の「命を守る3ヶ条」

1. ワクチン2つ(肺炎球菌+インフル)
2. 口腔ケア+誤嚥防止
3. 「いつもと違う」→ 即受診

「肺炎=老衰の引き手」ではない!
予防と早期治療で9割は助かる!


受診先の目安

  • かかりつけ医 → 軽症疑い
  • 救急病院 → 意識低下・呼吸困難
  • 歯科+言語聴覚士 → 嚥下リハビリ