[脳出血の後遺症]:片麻痺、視床痛、閉じ込め症候群の「辛さ」と回復の限界について

脳出血の急性期治療を乗り越えた後、患者さんとご家族が直面するのが、後遺症との長い闘いです。後遺症の種類や重さは、出血した部位によって異なり、特に視床出血後に残る視床痛は、生存者にとって最も辛い症状となることが知られています。

脳出血の後遺症 場所別・頻度・現実的な予後まとめ(2025年現在)

出血部位主な後遺症(よく残る順)発症後1年後の状態(目安)日常生活への影響度
被殻出血①片麻痺(特に手が不器用になる) ②感覚障害(しびれ・温度が分からない) ③注意障害・意欲低下・歩けるようになる:約70% ・完全に手が使える:20〜30%のみ ・軽い障害で仕事復帰:40〜50%★★★☆☆
視床出血①視床痛(灼熱痛・ズキズキ痛)←最も辛い後遺症 ②全身の感覚障害 ③記憶障害・感情失禁(泣き笑いが止まらない)・歩ける:約60% ・視床痛が残る:40〜60% ・痛みで寝たきりになる人も★★★★☆
皮質下出血(葉間出血)①半側空間無視(左側が完全に無視) ②失語(特に右利きで左脳の場合) ③性格変化・無気力・歩ける:80%以上 ・社会復帰:場所による(右脳なら比較的良い)★★〜★★★★
小脳出血①ふらつき歩行(酔っ払いみたい) ②ろれつが回らない ③手の震え(字が書けない)・ほぼ全員歩けるようになる ・自転車・階段は苦手なままの人多数★★☆☆☆
橋出血(脳幹)①四肢麻痺 ②閉じ込め症候群(目だけ動く) ③構音障害+嚥下障害・生存しても寝たきり・胃瘻・気切:70%以上 ・会話できるレベル:10%以下★★★★★

後遺症の「リアルな重さ」ランキング

順位後遺症の種類「これが一番辛い」と言う人の割合治療・緩和法の現状
1視床痛(灼熱痛・電気が走る痛み)約80%(視床出血生存者の)薬で半分くらいの人しか効かない
2重度片麻痺(全く手が使えない)約60%ロボットリハビリ・ボツリヌスで改善傾向
3失語(特に全失語)約50%集中的な言語リハビリで半分は会話可能に
4半側空間無視約40%プリズムメガネ・注意訓練で改善
5嚥下障害(むせ続ける)約30%嚥下リハビリ+一時的胃瘻で対応

後遺症が「かなり回復する」ケース・「厳しい」ケース

回復しやすい人回復が厳しい人
・50歳以下 ・出血量30mL以下 ・右脳(非利き手側) ・発症当日〜3日以内にリハビリ開始・70歳以上 ・出血量80mL以上 ・脳幹・視床 ・糖尿病・認知症が元々ある

最新の後遺症治療・支援

後遺症今できる最先端の治療・支援
重度片麻痺①ロボットリハビリ(HAL、ReoGo) ②脳深部刺激(DBS:一部施設)
視床痛①ミロガバリン+プレガバリン併用 ②ケタミン点滴(難治例) ③脊髄刺激療法(SCS)
失語①経頭蓋磁気刺激(TMS)+集中的言語訓練 ②AIアプリ(言語練習)
半側空間無視①プリズムメガネ ②視覚探索訓練ソフト
嚥下障害①嚥下内視鏡手術(声帯注入など) ②電気刺激治療(VitalStim)

家族が知っておくべき「現実的なゴール設定」

発症からの期間現実的な目標の目安
3ヶ月・寝返り・座位ができる ・むせずにゼリーが食べられる
6ヶ月・歩行器で歩ける ・簡単な会話ができる
1年・杖で歩ける ・簡単な家事(洗濯物たたむなど)
2年以降これ以上劇的な回復は少ない(維持が目標)

後遺症は「ゼロにはならない」けど、適切なリハビリと治療で「生活できるレベル」に持っていける人はたくさんいます。