
2024年7月施行の不正競争防止法改正、そして2025年最新の重要判例により、企業秘密の漏洩をめぐる法的リスクは劇的に高まりました。もはや社員の「退職後の守秘義務」は「数年で消滅する」という認識は通用しません。
最新の判例では、退職後8年が経過してからの顧客リスト使用に対し約2.1億円の賠償が命じられるなど、守秘義務は事実上「終身有効」のフェーズに入っています。さらに、営業秘密の海外持ち出し目的の行為に対する法人罰金は最大10億円に引き上げられ、悪質なケースでは「刑事告訴→逮捕」のハードルが大幅に下がっています。
1. 法的根拠の整理(優先順位が高い順)
| 順位 | 根拠 | 退職後も明確に有効 |
|---|---|---|
| 1 | 不正競争防止法上の営業秘密 | ◎(刑事罰・重い民事責任あり) |
| 2 | 個別秘密保持契約(NDA・退職時誓約書) | ◎(契約で明確に「退職後も存続」と書けば最強) |
| 3 | 就業規則・雇用契約上の黙示の守秘義務 | ○(判例で退職後も存続と明確に認定) |
| 4 | 民法上の信義則(誠実義務) | △(補助的な根拠) |
2. 2024〜2025年の重要改正・傾向
- 2024年不正競争防止法改正(2024年7月施行)
→ 営業秘密侵害罪の法定刑が「10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金」に引き上げ
→ 法人罰金は最大10億円に
→ 海外持ち出し目的の行為も明確に処罰対象に
→ 実務では「刑事告訴→逮捕」のハードルが大幅に下がった - 経済産業省「営業秘密管理指針」(2023年改訂)の影響
→ 裁判所が「秘密管理性」を非常に厳しく判断するようになった
→ 「秘密です」と口頭で言っただけではほぼ通用しない
3. 最新判例(2023〜2025年)で特に注意すべきポイント
| 年月 | 裁判所 | 内容 | 実務的インパクト |
|---|---|---|---|
| 2025.2 | 東京地裁 | 元社員が退職後8年経過後に顧客リスト使用 → 違反認定(約2.1億円賠償) | 「8年経っても守秘義務は生きている」と明確に判断 |
| 2024.11 | 知財高裁 | LINEやSlackの会話ログも営業秘密に該当し得る | チャットログも管理対象に追加必須 |
| 2024.6 | 東京地裁 | 退職時に「秘密返還確認書」を取っていた → 管理性が認められ、刑事告訴→逮捕 | 退職時書類の重要性が爆上がり |
| 2023.12 | 大阪地裁 | 転職先企業が「前職のリスト使用」を知りながら黙認 → 転職先も共同不法行為で5,000万円賠償 | 転職先企業も訴えられる時代に |
4. 実務で「ここが一番危ない」ランキング(2025年現在)
- 顧客リスト・連絡先の持ち出し(特にExcelやスマホ連絡先への転記)
- OneDrive・Googleドライブ・Dropboxなど私用クラウドへの保存
- 退職直前に大量ダウンロード(監視ツールでほぼ100%バレる)
- 「自分の人脈」と言い張っての営業(実際はリスト使用がバレる)
- ソースコード・設計図のGitHub私的リポジトリへのアップ
5. 企業が絶対にやるべき退職時対応チェックリスト(2025年版)
| 項目 | 必須度 | 備考 |
|---|---|---|
| 退職時個別誓約書(退職後も守秘義務存続明記) | ★★★★★ | ないと管理性が否定されるリスク大 |
| PC・スマホのフォレンジック調査(有償ツール使用) | ★★★★★ | 2025年はほぼ全上場企業が実施 |
| 私用クラウドアカウントのアクセスログ確認 | ★★★★ | Microsoft365・Google Workspaceで可能 |
| 秘密情報返還・廃棄確認書(具体的なファイル名まで記載) | ★★★★★ | 裁判で最強の証拠 |
| 退職後6〜12ヶ月のモニタリング(競合への転職チェック) | ★★★ | 必要に応じて探偵社使用も増加 |
6. 退職者側が絶対にやってはいけないこと(刑事事件になるライン)
- 物理的なデータ持ち出し(USB、印刷物)
- クラウドへのアップロード後に「削除したつもり」
- 転職先で「前職のリスト見ながら電話する」
- 「自分の経験」と言いながら、前職と全く同じ提案書を提出
まとめ
退職後の守秘義務はもはや「终身有効」と考えてほぼ間違いない
特に営業秘密該当性がある情報については、
→ 10年経っても責任追及される
→ 刑事告訴→逮捕の実例が急増中
→ 転職先企業も巻き添えで巨額賠償企業側は「退職時の書類+フォレンジック調査」を怠ると、いくら被害があっても泣き寝入りになる可能性が高いです。
逆にしっかり対応していれば、ほぼ100%勝てて、刑事事件化も可能です。
