
健康診断の受診後、結果が届いたらどのように確認し、対応すれば良いのでしょうか。「異常なし」なら安心ですが、「要経過観察」や「要精密検査」の判定に不安を感じる方も多いでしょう。健康診断の結果は、病気の早期発見と健康管理の第一歩です。本記事では、健診結果の一般的な見方と、判定区分が意味するものを解説します。さらに、異常所見が見つかった場合の具体的な対応手順、そして事業者(会社)が結果に基づいて負うべき事後措置の義務についても詳しくまとめます。結果を適切に活用して、ご自身の健康を守りましょう。
1. 健診結果の通知と保管
労働者への通知義務
- 事業者の義務: 事業者は、健康診断の結果を遅滞なく労働者本人に通知しなければなりません(労働安全衛生法第51条)。
- 通知内容: 検査項目ごとの結果、医師の総合的な診断、事後措置に関する意見などが含まれます。
健診結果の保管
- 事業者の義務: 事業者は、健康診断の結果を5年間保管することが義務付けられています(特定業務従事者健診など、一部の健診結果はより長い期間の保管が義務付けられています)。
2. 健診結果の一般的な判定区分と意味
健康診断の結果には、検査項目ごとに「基準値内」のほか、健康リスクの度合いに応じて以下のような判定区分が用いられます。
| 判定区分(例) | 意味 | 推奨される行動 |
| A / 異常なし | すべての検査項目が基準範囲内で、特に問題がない状態です。 | 今後も現在の健康状態の維持に努めましょう。 |
| B / 要経過観察 | 一部の検査値がわずかに基準範囲を外れていますが、直ちに治療が必要なレベルではありません。 | 生活習慣の改善(食事、運動、休養)に取り組み、次回の健診で改善が見られるか経過を観察します。 |
| C / 要精密検査 | 検査値が基準範囲を大きく超えている、または病気が疑われる所見が見つかっています。 | 速やかに専門医を受診し、病気の有無や程度を確定するための精密検査を受ける必要があります。 |
| D / 要治療 | すでに病気と診断されているか、または直ちに治療を開始すべき重篤な異常が認められます。 | 速やかに専門医を受診し、治療を開始する必要があります。 |
※判定区分や記号は医療機関や企業によって異なる場合がありますが、概ね上記の意味合いです。特に**「C:要精密検査」と「D:要治療」**は放置せず、迅速な対応が必要です。
3. 異常所見があった場合の対応(事後措置)
健診結果で「要精密検査」や「要治療」の判定が出た場合、労働者本人と事業者はそれぞれ以下の対応をとる必要があります。
労働者本人の対応
- 精密検査・治療の受診: 健診結果を医療機関に持参し、速やかに専門医の診察を受けます。再検査や精密検査の費用は、原則として健康保険が適用され、自己負担となります。
- 結果の提出(推奨): 会社に精密検査や治療の結果を報告する義務はありませんが、就業上の配慮(後述)を受けるために、医師の診断書や結果を会社に提出することが望ましいです。
事業者(会社)の義務
事業者は、健診結果に基づき、労働者の健康を確保するための義務(事後措置)を負います。
| 義務の種類 | 内容 |
| 医師からの意見聴取 | 健診結果に異常所見があった場合、事業者は産業医などの医師から、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について意見を聞かなければなりません。 |
| 就業上の措置 | 医師の意見に基づき、事業者は就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じなければなりません。労働者への不利益な取り扱いは許されません。 |
| 保健指導 | 健診結果に異常があった労働者に対して、医師や保健師による保健指導の機会を設けるよう努めなければなりません。 |
| 再検査(特定業務) | 有害な特殊業務に従事する労働者に異常所見が見られた場合、事業者の判断で再検査を実施し、その結果に基づき就業上の措置を講じます。 |
4. 健診結果を活用するためのポイント
- 過去との比較: 毎年の結果を比較し、値が徐々に悪化している項目がないかを確認しましょう。たとえ基準値内でも、年々悪化している項目は注意が必要です。
- 生活習慣の見直し: 「要経過観察」や軽度の異常は、生活習慣を見直すサインです。結果に記載された医師や保健師からのアドバイスを真摯に受け止めましょう。
- 自己判断は厳禁: 健診結果の自己判断は危険です。「要精密検査」が出たら、必ず専門医を受診してください。
