PEEP(Positive End-Expiratory Pressure、陽圧終末呼気圧)は、人工呼吸器を使用する際に設定される重要なパラメータの一つです。PEEPは、呼吸の終わりに肺内に一定の陽圧を維持することで、肺胞の虚脱(collapse)を防ぎ、酸素化を改善するために使用されます。
人工呼吸器のPEEP
PEEPの目的
- 肺胞の虚脱防止: PEEPは、呼気終末時に肺胞を開いたままにすることで、虚脱を防ぎます。これにより、ガス交換の効率が向上します。
- 酸素化の改善: PEEPは肺胞の開放を維持し、酸素と二酸化炭素の交換を助けることで、血中の酸素濃度を改善します。
- 肺コンプライアンスの改善: 肺胞の適切な膨張を維持することで、肺全体のコンプライアンス(肺が膨らむ能力)を改善し、呼吸仕事量を減少させます。
PEEPの設定
PEEPの適切な設定は、患者の病態や肺の状態に依存します。一般的な設定範囲は5〜20 cmH₂Oですが、特定の病態によって異なります。
- 通常の設定: 一般的に、初期設定として5 cmH₂Oが用いられることが多いです。
- ARDS(急性呼吸窮迫症候群): ARDSなどの重症肺疾患では、高いPEEPが必要とされる場合があります(10〜20 cmH₂O)。
- COPD(慢性閉塞性肺疾患): COPD患者では、過度なPEEP設定が肺過膨張を引き起こす可能性があるため、慎重に設定します。
PEEPのメリットとデメリット
メリット
- 酸素化の改善: PEEPは酸素化を改善し、低酸素血症を緩和します。
- 肺機能の保護: 肺胞の虚脱を防ぎ、肺損傷のリスクを低減します。
デメリット
- 肺過膨張: 過剰なPEEPは、肺過膨張を引き起こし、肺損傷や気胸のリスクを高めます。
- 心血管系への影響: 高いPEEPは静脈還流を減少させ、心拍出量を低下させる可能性があります。
PEEPの調整方法
- 臨床評価: 患者の臨床症状や酸素化状態を評価しながら調整します。
- 血液ガス分析: 動脈血ガス(PaO2)を測定して、酸素化と二酸化炭素排出をモニタリングします。
- 胸部画像: 胸部X線やCTを使用して、肺の状態や過膨張の有無を確認します。
PEEPの具体的な設定手順
- 初期設定: 一般的には5 cmH₂Oから始めます。
- 酸素化のモニタリング: パルスオキシメーターやABGで酸素化をモニタリングします。
- 調整: 酸素化が不十分な場合や肺コンプライアンスが悪化している場合、PEEPを徐々に増加させます。逆に、肺過膨張の兆候がある場合や心血管系への悪影響が見られる場合は、PEEPを減少させます。
まとめ
PEEPは、人工呼吸器管理において重要なパラメータであり、適切に設定および調整することで、酸素化の改善と肺保護が可能です。患者の状態に応じた適切なPEEPの設定と継続的なモニタリングが重要です。