人工呼吸器のSIMVモードについて

SIMV(Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation)は、人工呼吸器のモードの一つで、患者の自発呼吸をサポートしながら、設定された間隔で強制換気を提供する機能を持ちます。このモードは、特に人工呼吸器からの離脱(ウィーニング)プロセスで使用されることが多いです。

SIMVの特徴

  1. 自発呼吸の許容:
    • 患者が自発呼吸を行うことができ、その自発呼吸を妨げないように設計されています。
    • 患者の自発呼吸が検出されると、強制換気のタイミングが調整されます。
  2. 強制換気の設定:
    • 設定された間隔で強制換気(マンドトリーブレス)が提供されます。これにより、必要な換気量が確保されます。
    • 強制換気の回数(分間換気回数)や一回換気量(VT)を設定できます。
  3. 同期機能:
    • 患者の自発呼吸に同期して強制換気が提供されるため、患者の呼吸努力と人工呼吸器のサポートが調和します。

SIMVの利点と欠点

利点

  • 自発呼吸の促進: 患者の自発呼吸をサポートし、呼吸筋の強化や自然な呼吸パターンの維持に寄与します。
  • ウィーニングのサポート: 患者が徐々に人工呼吸器から離脱する過程で、必要なサポートを提供しつつ自発呼吸を促進します。
  • 柔軟性: 患者の状態に応じて、強制換気と自発呼吸のバランスを調整できます。

欠点

  • 呼吸努力の過大: 一部の患者では、自発呼吸が強制換気と競合することによって、呼吸努力が増大することがあります。
  • 不快感: 自発呼吸のタイミングと強制換気の同期がうまくいかない場合、患者に不快感を与えることがあります。
  • 複雑な設定: SIMVモードの適切な設定は比較的複雑であり、患者の状態を継続的にモニタリングし、設定を調整する必要があります。

SIMVの適応

  • ウィーニング: 人工呼吸器からの離脱過程で、患者の自発呼吸を促進しつつ必要なサポートを提供します。
  • 呼吸不全: 特定の急性および慢性の呼吸不全患者において、自発呼吸をサポートしながら適切な換気を提供します。
  • 術後ケア: 手術後の患者で自発呼吸が回復する過程で使用されます。

SIMVの設定項目と一般的な数値

  1. 分間換気回数(Respiratory Rate, RR)
    • 推奨範囲: 10〜14回/分
    • 患者の年齢、体重、病態に応じて調整されます。
  2. 一回換気量(Tidal Volume, VT)
    • 推奨範囲: 6〜8 ml/kg(理想体重に基づく)
    • 肺の保護を目的とした低換気量戦略が推奨されます。
  3. PEEP(Positive End-Expiratory Pressure)
    • 推奨範囲: 5〜10 cmH₂O
    • 肺胞の虚脱を防ぎ、酸素化を改善するために使用されます。
  4. 吸入酸素濃度(Fraction of Inspired Oxygen, FiO₂)
    • 推奨範囲: 21%(室内気)〜100%
    • 患者の酸素化状態に応じて設定されます。可能な限り低いFiO₂で酸素飽和度(SpO₂)を90%以上に保つようにします。
  5. 吸気時間(Inspiratory Time, Ti)
    • 推奨範囲: 0.8〜1.2秒
    • 患者の呼吸パターンと病態に応じて調整されます。
  6. 圧サポート(Pressure Support, PS)
    • 自発呼吸をサポートするために使用されることがあります。
    • 推奨範囲: 5〜20 cmH₂O(必要に応じて調整)

設定の例

以下は、成人患者の一般的な初期設定の例です。

初期設定例(成人患者)

  • 分間換気回数(RR): 12回/分
  • 一回換気量(VT): 6〜8 ml/kg(理想体重に基づく)
  • PEEP: 5 cmH₂O
  • FiO₂: 40%(必要に応じて調整)
  • 吸気時間(Ti): 1.0秒
  • 圧サポート(PS): 10 cmH₂O(自発呼吸がある場合)

設定の調整

設定は、以下の要因に基づいて調整されます。

  • 酸素飽和度(SpO₂): 90%以上を目標とする。
  • 動脈血ガス(ABG): pH、PaCO₂、PaO₂の目標範囲に基づいて調整。
  • 患者の快適性: 呼吸の労作感を軽減するための調整。
  • 呼吸力学: 気道抵抗や肺コンプライアンスに基づいて調整。

モニタリングと調整

設定後、患者の状態を継続的にモニタリングし、必要に応じて設定を調整します。以下のパラメータをモニタリングすることが重要です。

  • 酸素飽和度(SpO₂)
  • 動脈血ガス(ABG)
  • 呼吸数
  • 一回換気量
  • 分時換気量
  • 気道内圧

SIMVは、患者の自発呼吸をサポートしつつ、必要な強制換気を提供することで、患者の呼吸機能の回復と安定を図る重要なモードです。

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