eスポーツの興行収入と市場規模の違いをわかりやすく解説!

「興行収入10億円」と「市場規模100億円」――どちらも経済の大きさを表す言葉ですが、その違いを正確に説明できますか?

この記事では、混同されやすい「興行収入」と「市場規模」の定義を、eスポーツを例に挙げてわかりやすく解説します。一つのイベントのチケット収入だけを指すのか、それとも業界全体のビジネスを指すのか。それぞれの言葉が示す意味を知ることで、eスポーツやエンターテインメント業界のニュースがもっと深く理解できるようになります。

興行収入(こうぎょうしゅうにゅう)

  • 意味: 映画や演劇、コンサート、スポーツイベントなど、特定の「興行」で得られた入場料の合計金額のことです。
  • 特徴:
    • 限定的: 特定の作品やイベント単体の収益を示します。
    • 具体性: 「観客数 × チケット代金」で算出される、非常に具体的な数字です。
    • 人気指標: 作品やイベントの人気や成功度を測る指標としてよく使われます。
  • : 「映画『ONE PIECE FILM RED』の興行収入が197億円を突破した」というように使われます。これは、この映画が公開中に得た映画館のチケット売り上げの総額を指します。

市場規模(しじょうきぼ)

  • 意味: 特定の業界や事業分野において、一定期間内に取引された金額の総額、つまり「業界全体の総売上」のことです。
  • 特徴:
    • 網羅的: 特定の単一の作品やイベントではなく、業界全体を網羅します。
    • 多角的: 興行収入だけでなく、グッズ販売、放映権料、スポンサー料など、業界内のあらゆる収益源を含みます。
    • 潜在需要: その業界がどれくらいの需要やビジネスチャンスを持っているかを示す指標でもあります。
  • : 「日本のeスポーツ市場規模は2023年に146.85億円に達した」というように使われます。これは、eスポーツに関わるすべてのビジネス(大会のチケット、スポンサー、グッズ、配信収益など)の総売上を合計したものです。

比較表

項目興行収入市場規模
対象特定の単一作品・イベント業界・事業分野全体
示すもの作品やイベントの直接的な人気・収益業界全体の経済活動の大きさ
収益源主に入場料収入あらゆる収益源(入場料、スポンサー料、グッズなど)の合計
使われる例「映画の興行収入」「コンサートの興行収入」「eスポーツの市場規模」「ゲーム業界の市場規模」

eスポーツの文脈で言うと、「興行収入」は個々の大会(例:『VALORANT Champions』)のチケット売り上げなどを指し、「市場規模」は、その大会の収益だけでなく、プロチームのスポンサー収入、選手の給料、ゲームメーカーの収益、関連グッズの販売など、eスポーツに関わるすべての売上を合計したものです。

したがって、市場規模は興行収入よりもはるかに広い概念となります。

日本のeスポーツ市場規模

  • 2023年:146.85億円
    • これは日本eスポーツ連合(JeSU)が発表しているデータで、前年比117%と非常に高い成長率を示しています。
    • 2025年には200億円に迫ると予測されており、この市場の拡大は今後も続くと見込まれています。

日本のeスポーツ興行収入(あくまで目安)

  • 前述した通り、興行収入単体の正確なデータはありませんが、複数の情報源からおおよその規模感を推測できます。
  • ある大会の例では、有料のオフラインイベントで2万6千人以上の来場者があり、仮にチケットを平均7,000円とすると、入場料収入だけで約1.8億円になります。
  • eスポーツの市場収益は、スポンサー料や放映権料がメインであり、興行収入(イベント運営)は全体の約3割程度を占めるという調査結果もあります。

なぜ興行収入の情報が少ないのか?

  • 収益源の多様性: eスポーツの主な収入源は、チケット収入よりも、スポンサー料、放映権料、広告、グッズ販売、ゲーム内課金など多岐にわたります。
  • 大会ごとの非公開: 個々の大会のチケット売上は、主催企業が経営戦略上の理由から公表しないことがほとんどです。

このように、「市場規模」は業界全体の経済活動を示す包括的な指標として広く用いられていますが、「興行収入」は個別のイベントに紐づくデータであり、一般に公開されることは少ないという違いがあります。